92bit よろしく頼むよ
「 幸い、Ikuraグループの社長はこの私の父だ。 そして、父親という生き物は自分の娘に甘い、というシチュエーションを物語の中でいくつもみてきた。 つまり」
井倉は自信満々げだった。
「愛娘である私が父を口説くことができれば、サバ読みはあっけなく
「……えっと、もしかしてそれが作戦の全容……」
じゃないよね?
糸がそう言う前に井倉が応えた。
「そうだ。 我ながら完璧な作戦」
イクラちゃん、残念だけれどそれだけではとても勝利を確信する気にはなれないよ……。
なんて、イクラちゃんに言えるはずもなく。
「でも、今の話だと、イクラちゃんがお父さんにお願いすればいいだけだから、私たちは必要なくない?」
雛乃がもっともな指摘をする。
「いや、実はこの作戦の最重要ポイントである、『口説き文句』がまだ思いついていないんだ。 そこであなた達の出番ってわけ。 あなた達には口説き文句を考えて欲しいの。 電子よりも紙媒体の本でなければいけない、電子書籍にはこんなリスクがある、など父を納得させられるのであればどんな内容でも構わない」
電子よりも紙の本でなければいけない理由。
電子の本ではいけない理由。
それは一体なんだろう。
糸はすぐに解答を導くことは出来なかった。
「さて、改めて依頼だ。 電子書籍サービスのサバ読みを止めるため、父への口説き文句を考えてほしい。 よろしく頼むよ、IT戦隊MANIAC隊員、大場糸」
「いえっさぁ……って、な、なんでそれを?!」
あのヘンテコなストーリーは私だけの想像だったはず?!
「誰もいじりはしていなかったけど、糸ちゃん、目を
顔がみるみると赤く染まる糸の背中を、英美里は慰めるようによしよしと
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