93bit 五人を結びつけた正体


 「それにしても、どうして私たちに依頼をしたの? 私たちは、Ikuraグループとも、ましてやお嬢さんとも全然接点がない気がするんだけど……」


 真衣のまっとうな疑問に他の三人もうんうんと頷く。


 「え、だってMANIACはどんな悩みでも解決してくれるって……」


 井倉が言いかけたときだった。


 「おお、みんな意気投合しているようだねぇ」


 陽気な声と共にハジメが部屋にやってきた。


 ハジメの後ろにシズクも付いてきている。


 「この人が言ったんだよ、『MANIACに全てお任せ!』って」


 井倉はハジメを指さした。


 「ハージーメーさぁーんー、どーゆーことですかぁー?!」


 また適当なことを口走ったであろうハジメをいさめるように糸がジリジリとした目線でなじる。


 「ちょっと待って糸さん、ハジメちゃんは悪くないの。 悪いのは……私なの」


 「え? 悪いのはシズクさん?」


 予想外の展開に糸はたじろいでしまう。


 「私とハジメちゃんで街中を歩いていたらバッタリとイクラちゃんに会って。 つい金色の髪に惹かれてしまって……。 それでハジメちゃんにお願いしたの、イクラちゃんがここに来るように勧誘してみてって」


 「つまり、黒幕はシズクさんだったってことですか?」


 「ええ……、ごめんなさいね」


 シズクは何ともなまめかしい仕種しぐさで謝った。


 「ま、まぁ、シ、シズクさんなら仕方ないかぁ」


 糸は手のひらを返したように引き下がる。


 「なんでシズクにだけ甘いんだ!!」


 ハジメは糸の態度の豹変っぷりをすかさず非難した。


 「でも、最初は普通に勧誘するつもりだったんだけど、イクラちゃんと話しているうちに、イクラちゃんが抱える悩みを知ってしまって、せっかくだからその悩みを君たち四人に解決してもらう方向で話を進めたんだよ。 イクラちゃんは悩みを解決でき、君たちはまた一歩成長する。 どうだい、なかなか考え抜かれているだろう?」


 ハジメは胸を張ってこれまでの経緯を話した。


 「なるほど、ハジメさんは健気けなげな少女五人をうまく口車に乗せ、自由自在に操ろうとしたと……。 ハジメさんは……」


 「どうしたんだい? 真衣?」


 「ハジメさんは、ドヘンタイだけじゃなくて、ナンパ師でもあったんですね」


 「ナンパ師……ドヘンタイ……」


 ハジメは今にも膝から崩れ落ちそうになっていた。

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