54bit えっとですね……


 真衣は神妙な面持ちになる。


 糸と雛乃はゴクリと唾を飲み込んだ。


 「私がそんなこと、するわけないじゃない」


 真衣は機嫌を損ねたようにそっぽを向いた。


 しそうなんだよなぁ……、という返しを糸はぐっと堪える。


 「英美里のことをよく知っていそうな人から聞き出すの」


 「英美里ちゃんのことをよく知っていそうな人?」


 糸は真衣の言葉にいまひとつピンとこなかった。


 真衣が口を開きかけたとき、部屋の扉の動く音が聞こえた。


 「みんな調子はどうー? ってなんか空気が重くない?」


 部屋に入ってきたのはハジメだった。


 後ろにシズクも続いている。


 「ちょうどよかった」


 真衣がニタリと口元をほころばせた。


 「どうした真衣、なんかとんでもないことを企んでいる顔をしているような……」


 ハジメはその場から二、三歩後ずさりして警戒心をあらわにする。


 「もしかして、英美里ちゃんのことをよく知っていそうな人って」


 「そう、ハジメさんとシズクさん」


 糸はハジメとシズクを交互に見た。


 たしか二人は、真衣ちゃんの過去をよく知っていたような。


 もしかして、英美里ちゃんについても何か知っているのだろうか。


 「英美里をよく知っている? 英美里がどうかしたの?」


 「えっとですね……」


 ハジメの質問に対し、糸が三人を代表して事件の経緯を説明した。

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