16bit ITを理解するためには


 デスクトップが正常に表示されたことを確認すると、糸は妙な達成感を覚えた。


 物心がついた頃から家には当たり前のようにパソコンがあり、親から教わったパスワードを入力して、何の苦労もなしにパソコンを扱うことができた。


 しかし今回は自分でキーボードやマウスを選び、自分でコードをつなぎ、自分でパスワードを設定した。


 他の三人にとってはごく普通の作業だったのかもしれないけれど、私にとっては何もかもが初めてで、少しだけ経験値を得た気分だった。


 なるほど。


 糸はハジメとシズクの意図がわかってきたように感じた。


 自分でITの経験をし、学んでいく。

 

 実はそれは、授業のように説明をただ聞いているよりも、ずっと理解できる方法ではないだろうか。


 ハジメさんも何気に考えているんだな。


 と、感心しかけたのも束の間。


 「で、パソコンを設定し終えた私はこれから何をすればいいの……」


 やっぱりハジメさんは少し放任しすぎている気もした。


 「うーん、私もよくわかっていないんだよね。 ハジメさんは『チームとしてこれから取り組むように』って言っていたけど」


 雛乃が糸の嘆きに反応した。


 「まずは私たち四人が仲良くなれっていうことなのかな……。 でもどうやって……」


 「あ、それならいい方法を思いついたよ」


 雛乃が食い気味に言った。


 「え、いったいどんな方法?」


 「その方法とは……。 第一回 高速タイピングトーナメント!」

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