第13話 猫は捨てないでね!※神様より

 意外にも電話線とLANが配備されていることに驚く。


「電話は知っていたけど、LANケーブルまであるのかよ……」

「それは、以前の神様が着けたものですにゃ」


「え? 先代の神様はネットをしていたのか?」

「それは言えないですにゃ……」


「言えないってなんで?」

「自分のやり方を見つけてほしいという先代の神様の意向ですにゃ」


「そういうのがあるんだな……」


 パソコンを開き早速アカウントを作る。アカウント名は……猫神さまっと……。あとは、プロフィール画像を付けて……。カメラが無いことに気付くと、適当に白猫の写真をネットから拾ってきた。


 だけど……一体何を配信すればいいのだろうか? 最近ネットに触れていなかったせいか何もいい案がでず、ネットサーフィンをし始めてしまう。


パンッ

パンッ


「え? 誰か来ていたのかよ」


 普段なら境内に入れば気付くはずなのだが、ネットに夢中になっていたせいか、参拝者の気配に気づかなかった。


 えっと、それで……今回のお願いは……。



"この子の飼い主が見つかりますように……"



飼い主? まさか……。俺は慌てて拝殿前に向かう。すると、小学生くらいの女の子が小さな猫を抱えているのが見えた。


 やっぱりそうなのか。予想はしていたのだが、彼女は捨て猫を拾ってきていたようだった。一応様子を見ておこうか。俺は神の力でここまで連れてきた経緯を簡単に見る。


 そうか、家で反対され、どうしようもなくなってお願いを……ちょっと待て、俺の能力って猫と喋れるんだよなそれなら普通にこの神社に入れればいいじゃないか!


 俺が姿を見せようとすると、巫女姿のミイコが袖を引っ張っるのが分かる。


「ミイコ、どうしたんだよ?」

「今、姿を見せようとしましたよね?」


「そうだよ? あの子の願いを叶えるためなんだけど」

「叶える……すみません。わたしはあの子猫をここで飼おうとしているのではないかと思いまして」


 ミイコの不安そうな表情が、ここで預かることができないと言っている様に見える。


「だめなのか? ここは猫神神社だぞ?」

「やっぱり……ここに住める猫は限られているのです、というより本来覚醒した猫又以外はその子にとっても負担になってしまいます」


「負担? 普通に境内で過ごせばいいじゃないか?」

「わたしたち猫又は成猫で、それもある程度生きてきた者でない限りは強制力が働いてしまいます……」


「強制力ってなんだよ?」

「神様も知っているでしょう? あなたの代わりに猫が働いている事を」


「ああ……」

「猫は性質上圧倒的な力のある猫には逆らえません。同等もしくは少し上位であれば問題ありませんが、それ以外は性別が違わない限りは従うように出来ているのです」


 それを聞いて俺は、昔テレビで見た自然の掟のようなものを思い出す。ボスネコがいて、群れを従える。それが猫の世界での掟みたいなものだ。


「メス猫だとしたら……ミイコがトップになるのか?」

「メスならそうですね……ですがその両方を従えることが出来る存在がいるのです」


「それって……もしかして、俺?」


「はい……」


 思い返してみれば、あのサブローさえ、神様と知ったとたんに態度を変えた。ある程度フランクになっているのは、俺がそれを望まないからだろう。そんな猫界のトップみたいなのが3人もいる様なこの神社は、新入社員が役員三人と住むみたいなものなのか?


「それは、しんどいな……」

「何となく理解して頂けましたか?」


「ああ、でも飼い主を探すのであれば問題ないのだろう?」

「それはもちろん問題ありません、"願い事"なので神の力も使えます!」


「そっか、それならやっぱりあの子と話してくるよ」


 俺は、姿を現し女の子の方に向かった。彼女の抱えていた猫は血統のよさそうな深いグレーのオッドアイの猫だった。


「ねぇ?」

「はい……」


 声をかけると、女の子は驚いたような表情を見せる。なぜか、少しおびえている様にも見えるのはきのせいなのだろうか?


「由美ちゃん大丈夫にゃ、この方は神様にゃ」

「ちょっと、バラすなよ!」


「あ、はい申し訳ありませんにゃ……」

「そんなに畏まらなくてもいいんだけど……」


 そうか、そういえば猫と話せるのはあいつらだけじゃないんだな……。そう考えていると由美ちゃんと呼ばれる女の子が口を開く。


「あ、あの……独り言ですか?」

「え、あ……」


 忘れていた、子猫は必死に伝えようとしているが猫と話せるのは俺だけだ。


「わたし、逃げた方がいいですよね……?」

「あー、ちがう、変質者とかじゃないから警察とかは呼ばないで! その、猫! ネコ!」


 余計におびえる由美ちゃんは、抱えた猫をみて少し落ち着いた表情を見せる。


「もしかして、飼ってくれるんですか?」


 彼女はそういうと、少し明るい表情になる。それと同時に子猫は明らかに固まっている様に見えた。


「自分が飼うわけじゃないのだけど、飼いたい人を紹介できるかもしれないんだ……」


 そういうと、子猫はほっと安堵の様子を見せ、力が抜けた。


「神の力を使ってくれるのですかにゃ?」


 ちょっとお前は黙ってろと子猫を睨むと、もう一度固まる。それと同時に由美ちゃんが返事をしてくれた。


「本当ですか? あ、でも……」

「何か気になる事でもあるの?」


「新しい飼い主さんを教えてほしいです……この子にまた……」


 彼女は葛藤しているのかもしれない。会いに行きたいけど、飼ってほしい。それ以外にもこのあたりの人ならまた会いに来ることが出来るとも考えているのかもしれない。


「わかったよ、決まったらまた神社に来てよ?」

「そしたら、教えてくれるんですか?」


「うん、一緒に会いに行こうか!」


 そういうと、彼女の表情が曇る。え、なんで? 俺なにか間違えたことを言っているか?


「わたしも一緒にいきますよ? だから心配しないで?」


 すると、後ろからミイコがそう声を掛ける。すると由美ちゃんの表情は明るくなり、元気に返事をした。子猫を受け取り、彼女が帰るのを確認すると早速神の力を使い一番大切に育ててくれそうな人を探した。


 だが出てきたのは……。


「これ、リサイクルショップのおじさんじゃねーか!」

「あー、あの人寂しがりやですからね……」


 こうして、俺はまたおじさんの所に行くことになった。

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