第2話 初仕事!

 少し考えていると慌てた様にミイコが叫ぶ!


「神様! 何してるにゃ? 叶えると決めたら情報収集ですにゃ!」

「お、おう」


 俺とミイコは慌てて帰りそうなお爺さんを追いかけた。


「覗くにゃ!」

「覗くっていわれてもどうやれば?」

「なんでもいいから、覗こうとしてみれば見えるはずにゃ!」


 ミイコにそう言われて、咄嗟に手でOKマークを作り覗いた。すると、ミイコの言っていた様にお爺さんの過去が見える。そこから見えるのは映像とは違い頭の中にキュッと入れられた様な感覚。


「にゃんか必要そうな情報はにゃいですかにゃ?」

「なんか色々あり過ぎてよくわからないんだけど」


「気にしている事とか、心配している事とかにゃにか怪しいところはにゃいのかにゃ?」


 なるほど、少し整理してみるか。

 このお爺さんは、一人娘がいて、大学生の孫も居る。細かなケンカはあるにしても特に仲が悪い様にも思えないんだけどなぁ……。

 この人は何を心配しているのだろうか?


「ミイコ、特に問題が無いとかあるのか?」

「そうですにゃあ、感謝してお参りされる方は多いですにゃあよ?」


「なるほど、感謝か……」

「どうかしたんですかにゃ?」


「いや、神社にお願い事って問題とか抱えてたりするものだと思っていたからさ……」

「なるほどにゃあね、最近の人は少にゃいですが、神道というのは感謝やお礼で成り立っていますにゃ。日々悲しい事無く過ごせるというのは感謝する事ですにゃあよ?」


「まあ、確かに都合のいい時だけお願いするというのは便利屋みたいで神様では無いよなぁ」

「ですにゃ、その分神様の方もしっかりと考えて願いを考えてあげるんですにゃ」


 考えて、願いを叶えてあげる。なんだか不思議な言葉だけど今回それを痛感する。そう考えると、俺は今回の願いを解決するにむけて、一つの案が浮かんだ。


「あのさぁ、ちょっと出かけてもいいか?」

「にゃにしに行くにゃ?」


「そりゃ、願いを叶えに……さ!」

「それなら、わたしも付いて行くにゃ!」

そういうとミイコはくるりと巫女の姿になった。


「それでいくのか?」

「普段はこれで買い物とかにでてますよ?」

「すごく目立つと思うんだけど……」

「そういう神様も甚平ですけど?」


 確かに、和装と言われて思いついた格好がこれだったのだけどまぁレストランに行く訳じゃ無いしいいか。そう考え、とりあえずそのまま出かける事にした。


目的地に着くとミイコは不思議そうに言う。


「神様、ここは?」

「うん、旅行会社だよ?」


「またなんで旅行会社なんです?」

「今既に仲がいいならさ、こういうイベント的なきっかけでも楽しめるんじゃないかなって」


 そう、俺が考えたのは家族旅行のきっかけづくりだった。あのお爺さんは現状でも満足している、だからこのまま普通に仲良く過ごして行きたいんじゃ無いかと思った。


 俺の中では家族旅行にはあまりいい記憶はない。

夫婦にもよるのだろうが、旅行で喧嘩をしたりする夫婦もよく居る。


 だからこそ、娘夫婦だったりと余生に残る様ないい思い出を作る所が見たかった。


「そういう事ですか……浅はかな考えですけど及第点という事にしておきましょう」


 そうキツめに言いつつミイコは少し微笑む様に笑っていた。


 俺は年寄りでも行ける温泉のパンフレットを色々と取り、それをお爺さんとその家族にこっそり届けると、また猫神神社に戻り、お爺さんの家族を覗く。


「どうやら、パンフレット気に入ってくれた様だよ。お爺さん直ぐに娘に電話している」

「良かったですね! これも一つの神様の願いの叶え方なんですねぇ」


 なんとなく、良いことをした気分になった。

 これからもこんな風に叶えて行ければ、みんな幸せな世界にしていけると思う。これが神様の仕事ならば中々すごいのではないだろうか。


 ふと、今日の事で俺は気になる事をミイコに聞いてみた。


「あのさぁ、今回みたいに神社の外へ出ている間にお参りの人が来たらどうなるんだ?」


 神様不在の為スルーとかは残念すぎる。

だが、ミイコはあっさりと解決してくれた。


「柏手が境内で鳴ると呼び戻されますよ?」


 マジかよ……。


「そしたら沢山参拝者が来たら全く動けないんじゃないか?」

「まぁ、そうなりますね。ですからわたしがいるじゃないですか! カップラーメンとか鰹節とか色々買ってきますよ?」


 鰹節はミイコのとして、神様はカップラーメンなのか……対して前と変わらない食生活になりそうだ。


「そうこうしているうちに次の方がこられましたよ?」


 ミイコがそういうと、階段を上がる女性の姿が見える。しっかり茶色にカラーされた肩まで髪に、少し濃い目の化粧。細身の若くて可愛い女の子だ。


「ふぇ〜めちゃくちゃ可愛い、こんな子も神社に来るんだな」

「神様、願いに贔屓はだめですよ?」

「わかってるって、でもどんな願いをするんだろうな」


 パンッ


 パンッ


 境内に柏手が響くと新しい願いが聞こえてきた。


"男運がありません、どうか誠実な人と出会わせてください"


「うーん……俺でよくね?」

「神様、本気で言ってます?」


 これもまた良くありそうな願いだが、ミイコの冷たい視線が突き刺さっている事もあり、とりあえずその子の過去を見てみる事にした。

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