step2.ロックオン
step2.ロックオン(1)
これはあれか? 援交とか援交とか援交とか。
「その顔。パパ活だと思ってる?」
ああ、パパ活か。パパ活。おじさんとデートしてお小遣いを貰うとかいう。
「間に合ってます」
「いや。だからパパ活じゃないってば。お礼がしたいの!」
「間に合ってます」
「やだ。ちょっと。行かないで。おまわりさーん!」
なぜ、おまわりさんを呼ぶ!? 悪いことをしたわけでもないのに一瞬ぎくりとなってしまうのが小市民の悲しさだ。
怯んだ
「あたしはアコ。おじさんは?」
「…………」
「名前教えてよ」
「間に合ってます」
「え、なに。おじさんおもしろーい」
まったく面白くない。ことここに至って由基はオカシイぞ、と感じ始めた。
「あのね。おじさんはもう、おうちに帰るから、放してください」
「やだ。アコをひとりにしないで」
「いやほら。君もおうちに帰らないと」
「君じゃなくてアコって呼んで」
「間に合ってます」
「もー、なんで!」
ぐっとつないだ手に力をこめ、アコは由基の手の甲に爪を立てた。
「アコはこんなにおじさんのことが好きなのに!」
いつそんな話になった!! 由基はぱくぱくと窒息しそうな金魚のようにしながら、うるうるした瞳で自分を見上げてくるJKアコを見下ろす。
「えーとね」
いかん。ここで思考を停止させたらいかん。由基は必死に自分の脳みそを叱咤する。
「君と俺とは赤の他人だよね?」
「さっき知り合ったじゃん」
「そう。さっき知り合ったばかりで」
「うん」
「ついさっきまで、君は元カレと揉めてたわけだよね」
「そーだね」
「元カレなんだよね」
「あんなのがカッコよく見えてたんだもんねー。アコがバカだった! でもアコは今はおじさんのことが好き!」
だからどうしてそうなる!
「だって、おじさんすっごくステキだった。おじさんはアコを助けに来てくれた白馬の王子様だもん」
ねーよ。白馬の王子様はねーよ。再び酸欠になって由基は頭がくらりとなる。
「だからね。アコ、おじさんのこと好きになっちゃったの」
ぽっと恥じらって目を伏せながらも、アコは恋人つなぎした手の親指で彼の手の肌にのの字を書く。由基は内心で冷や汗を垂らしながら思い至っていた。
この娘はあれだ。常に恋愛のことしか考えておらず一目惚れは当たり前、次から次へと人を好きになるから恋人が途切れない。恋愛ドラマやマンガのシチュエーションが頭にこびりついていてすぐに自分を当てはめる。自分がヒロインで、恋愛がすべて。恋愛をしていないと生きていけないといっても過言ではない。いわゆる、恋愛脳というヤツだ。
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