恋愛脳なギャルJKに好き好き迫られてるおっさんだが俺も恋愛脳になってしまうのだろうか
奈月沙耶
step1.出会い
step1.出会い(1)
「おーじーさん!」
語尾にピンクのハートマークを乱舞させながらアコが
駅前ロータリー東側の駐車場前。時刻は午後八時。勤務先の洋菓子店の閉店作業と日報の送信を終え、マイカーを駐車してあるこの場所に由基がやって来るのは大体がこの時間だ。それを知ってからアコはこうして毎晩由基を待ち伏せしている。
「ぶうう。おじさん、なんでアコを受け止めてくれないの?」
決まってる。由基のようなおっさんが路上で女子高生と抱き合ったりすれば速攻で目の前の交番からおまわりさんが飛び出してくるからである。
いやいや違う、そうじゃない。いかんいかんと由基は自らの思考の偏りを正す。そもそも、そもそもだ。自分は見ず知らずの女子高生と気軽にハグするような人間ではない。どころか、恋愛感情のない女性のからだに触れるなど考えられない。
「もう。減るもんじゃないのにい」
なにをもって減らないと断言するのか。ライトでドライでカスカスなコドモの言い分に賛同するつもりは由基には毛頭ない。
「未成年がひとりでうろうろする時間じゃない。早く帰りなさい」
「わかってるってば。おじさんにチュウしてからね」
「早く帰れ」
言い捨て、脱兎のごとく由基は駐車場内に駆け込み愛車の運転席に体を滑り込ませる。クルマを発進させ出口ゲートに向かうと、歩道に佇み、むうっと頬を膨らませているアコの姿が目に入る。
市内にある県立高校の制服のスカートはとても短い。季節柄もうジャケットを脱いでいて長袖の白いブラウスの袖を腕まくりして胸元もくつろげ、緑色のスクールリボンの上にはキラキラとネックレスらしきものが光っている。茶色く染めているらしい髪はサイドでポニーテール、おっさんにだってそれとわかるほどの盛り盛りアイメイク。ギャルだ。紛うことなくギャルで女子高生だ。
定期購入している駐車券を精算機に通し、ゲートバーが上がったのを確認して路上に出る。ウィンカーを出して左側へとハンドルを切ると、アコがめいっぱい両腕を前方に伸ばして由基に向かって手を振っているのが見えた。これもここ数日毎晩目にする光景だ。
バックミラーの中で小さくなっていくアコの姿にちらりと目をくれ、由基は重々しく息を吐く。どうしてこんなことになったのか。
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