72 6人目のメンバーがJSだった件
俺が宴の席へ戻ると、タイミング良くデザートの時間となった。
二人の可愛い侍女が黒いミニスカートのメイド服を着て、ワゴンを引いて現れたのだ。
「わぁ」という女子たちに交じって、俺も思わず「おぉ」と歓声を上げてしまう。
それはウエディングケーキと言わんばかりの、フルーツが豪勢に盛られた三段重ねのケーキだった。
テーブルから離れた広いスペースにワゴンが固定される。その奥に立つタキシード姿のゼストが、まさにそんな雰囲気を醸し出していた。
「ユースケ、えっちな事考えてるでしょ?」
カーボ印の青いワンピースを着たメルにズバリ言い当てられて、俺は慌てて女子たちから視線を
切り分けられたケーキを手に席へ戻ると、ヒルドの向こう側に座ったメルが見知らぬ少女と仲良さげに話していることに気付いた。
「あれ? 向こうの世界の子?」
「ちさだよ、ユースケ。まだ12歳なんだって」
それを聞いて、俺はこれでもかというくらいの
彼女は座った時の背格好が10歳のメルと大して変わらないのに、俺がデザインした赤のチャイナ服を着ていたのだ。
横並びの席でヒルドの影になってしまい、見えていなかった。
座高も表情もメルと一緒のあどけない感じなのに、胸だけが他のハーレム女子たちと一緒だ。
「反則じゃねぇか。誰が連れてきたんだ?」
ゼストか? と思った所で、ヒルドが「リトさんらしいよ」と意外な答えをくれる。
「ええっ?」
俺は慌てて、山盛りのケーキを前に盛り上がる後方の席を見やった。
リトに、
リトといえば、巨乳ハーレムメンバーを探すべく俺たちの居た異世界に行って、チェリーを連れてきたり、「お母さん」を連れてきそうになったりするような感覚の持ち主なのだ。
それをこんな一部の男たちに称賛されそうなマニアックな少女に目を付けるとは。
ある意味、リトらしいのかもしれないけれど。
「ちさ、ユースケがいやらしい目で貴女の事見てるわよ」
「ひぇえっ」
いつしか移動してきたチェリーが、俺たちの後ろでそんな誤解を生むようなことを言う。
表情を強張らせたちさと目が合って、俺は「ちがうちがう」と必死に嘘の弁解をした。
俺は立ち上がって、改めてちさに挨拶する。
「ユースケです、初めまして。俺、川島台から来たんだけど分かる?」
「はい、分かります! 私、向山小だから」
「そ、そうか。隣の学区だな」
向山は俺の住んでる所からさほど離れていない隣の町だ。
年齢を聞いてまさかとは思っていたが、ちさは小学生らしい。
ぴょんと椅子を下りて、ちょっと照れながら「よろしくお願いします」と頭を下げると、長いポニーテールが胸の前に落ちて来る。
「でも何でこっちに? リスクだって色々聞いてるんだろ? クラウが変態エロ魔王だったらとか思わなかったのか?」
「それは……」と顔を赤らめるちさだが、ぶんぶんと首を振って「そんなことないです」と俺に訴えた。
「学校に行くと男子がうるさくて。だから今まですごくこの身体が嫌いだったけど、リトさんもクラウ様も素敵だよって言ってくれるから」
数年前の美緒も、そんな気持ちだったのを俺は知っている。
このあどけない顔とミスマッチの発育の良い身体でランドセルをしょっていたら、男たちの目に留まらないわけがない。
「私なんて羨ましいくらいよ」
いつになくチェリーが食い付いてくる。流石ロリ好きを宣言しただけのことはある。
「ダメよ、ユースケ。ちさのことえっちな目で見ちゃ」
そして何で俺だけがメルに
両手を腰に当てたメルはお姉さん気取りだが、ちさの方が年上だ。
「いや、見てない。絶対に見てない」
大きく手を振って、俺は話題を反らそうと他のメンバーに目をやった。
そういえば、マーテルの話じゃハーレムメンバーを10人集めようとしていたみたいだが、ここにいるのは美緒と佳奈先輩とチェリー、そしてML姉妹とちさの6人だ。俺がこの世界に来た日に5人しか集まっていないと聞いていたから、仕事は難航しているようだ。
まぁ、胸がデカいという理由で異世界行きを誘われたところで、ホイホイとついて行こうだなんて普通は思わないだろう。
「あれ、チェリー。その剣は?」
ふと、彼の腰に
チェリーは柄に添えた手に視線を落とし、「えぇ」と頷く。
「私も何かしようと思ったのよ。後ろで見ているだけなんて性に合わないってね。護身用に持ってろって、ずっとリトに言われてたし」
「それで今日はその格好なのか」
けれど、チェリーがこの世界に来た理由は、俺とは違う。
あくまで女として巨乳メンバーの一員になるためだ。この城で優雅に生活するという事は、これとない待遇のはずなのに。
一人町へ出たチェリーは、今度は戦うことを選ぼうと言うのだろうか。
「今日は剣師の気分に浸りたかっただけよ。これからのことは、まだ考えてないわ」
「その気分、僕も分かるよ! 僕も絵描きと剣師の二つの顔を持つ男だからね」
俺たちの会話を聞きながらずっとケーキを食べていたヒルドが、自分の出番だと言わんばかりに立ち上がり、キラキラにデコられた腰の剣をチェリーに示した。
チェリーは
剣を持つことはチェリーの決心のつもりなのだろうか。
ヒルドは別としても、俺やチェリーはこの世界の人間じゃない。酒場での戦闘を思い返しても、剣を持ったところで戦えるなんて到底思えなかった。
けれど、俺たちが戦えるかなんて奴等には全く関係なかった。
華やかな宴が終わり、夜が更けていく――。
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