長倉冬青のがん闘病記 1.
私がお話を書いてみようと一念発起し、Wordに黙々と文章を打ち始めて数ヶ月が経とうとしていました。
定期的に受診しているクリニックで、血液検査の結果を主治医から聞いた時、その医師は少し深刻な表情をしていたのを覚えています。
「長倉さん、至急精密検査を受けて下さい」
「! 何か(悪い結果が)出ましたか?」
私も思わず身を乗り出します。ああ、私は志半ばにして夭折(って歳でもない)してしまうのか、と既に悲劇の主人公です。
「このPSAの数値が8ng/mlとグレーゾーンなんですよ。前立腺がんの」
前立腺がん。
前立腺。
男性特有の臓器。
一瞬で悲劇の主人公感は
ただ、炎症が起きているだけの場合でもPSA値は上がるそうなので、それをはっきりさせるためにも更なる検査が必要なのだとか。
そっかー。五十代でがんを発症するってあまりなさそうな気がするけど、どうなのかなあ。それに前立腺がんって、もっともっとお年寄りの方がかかるものだと思ってたよ。
と半分以上は癌にかかっている気持ちになりながらも帰宅しました。
カミさんに話したらびっくりした様子ながらも平静です。さすが医療従事者は肝が据わっているぜ。
さて、それで精密検査なのですが、ありがたいことに近所の総合病院で泌尿器科に詳しい先生がいるとの事で、そちらへの紹介状を書いていただきました。ラッキー。
早速その翌日に、仕事を休んでその総合病院を朝いちに受診。
病棟に着くと……
なんだこの混雑。五十人以上はいるんじゃないか。
看護師さんが言うことには
「午後になると思いますからケータイの番号を教えていただくか、午後になったらまたこちら来ていただいてお声かけ願えますか?」
と。
oh…… それだけでぐったり疲れたぜ。
でもまあ椅子に空きはあったので、そこに座ってiPhoneに落としたKindleを読んで時間を潰していたら、意外とあっという間でした。
診察室に呼ばれると、先生は私と同い年くらいの男性の方。
簡単な問診を受け紹介状を読んだ先生は、癌かどうか疑っているようです。
「まあ、念のためMRIで視てみましょう」
そのあと我が耳を疑う一言が。
「しこりがあるか触診しますね」
触診?
仰天した私は
「今? ここで?! しょくしん?!」
と変な声が出てしまいました。恥ずかしい。
前立腺はお腹の奥にある器官。最も直接に近い形で触れるには……うわああああ
そのまま私は処置台に仰向けで寝っ転がされ、丸出しにされ、ゴム手袋をはめた先生の指が、指が…… アーッ!
私の初めては先生に奪われてしまいました。
「ふむ、特にしこりとかはなさそうですね」
なら結局この恥辱、屈辱感は無駄だったということですかい先生。
しかし無駄でなければむしろ嫌な展開になるわけですが……
ひとまずは更なる精密検査を経て確かめてみようとのことになりMRI検査の予約を取るだけで終わったのでありました。
しかし、この時の私は更に恐るべき事態が待ち受けているなどとは思いもよらなかったのです。
― 続いちゃったりします ―
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます