番外編 アイドルと夏祭りに出かけたら

 ここはとある夏祭り会場。

 会場の入り口近くで待ち合わせで、俺は立っている。するとすぐ後ろで声がした。


「ごめーん。待ったぁ?」

「おっせえよ。どんだけ待たせりゃ気がぶっ!」


 声がした方に振り向くと、やられた……。


「ぷっ ひっかかってやーんの」


 振り向いた俺のほっぺたにのヤツの指がぶっ刺さっていたのだった。小学生とかがイタズラでよくやるアレである。つまりアレだ、桜玖良の精神年齢は小学生ってことだ。


「はいはい……待たせといてそれかよ。まあいいけど」

「なによー? そこは全然待ってないよ、とか、俺も今来たばっかりとか言うとこでしょう? そんなんだからいつまでたっても彼女の一人もできないんですよお兄さん?」

「自分が遅刻したの棚にあげて責めるとか人としてどうかと思うが……」

「え~お兄さんいいんですかぁ? 遅れたのは私が理由じゃないんだけどなあ?」

「は? それはどういう……えっ?」


 俺は言葉を失った。


「し、しほりん……?」

「え、ええと……お兄様、お、お久しぶりです」


 俺の目の前に飛び込んできたのは、なんと眩しいゆ、浴衣姿のしほりんではないか⁉ 薄紫色っぽい花?柄の大人っぽい浴衣に紺色の帯、落ち着いた感じがしほりんによく似合いすぎるくらい似合っていた。


「お、お兄様……ど、どうですか?」

「ど、どうって……え、す、すごく……いいと思います……」

「え、ええと……それはよかったです……」

「は、はい……」


「え、何よ、このお見合いかって言う感じの会話は?」

「兄貴? 私たちもいること忘れてないよね?」


 お美しいいいいしほりん様の横には桜玖良と妹の亜季乃、うん、こいつらさえいなければしほりんと二人きり……いや、それはそれでどうしていいかわからんからもうこれでいいです、ハイ。実を言うと亜季乃があの二人とお祭りに行くのに、せっかくだからお兄さん(笑)も来ます? 的なノリでボディーガード的な役割で呼ばれただけなのである。ただ、実際心配ではあったので喜び勇んでついてきただけである。


「ま、いいけど。しほちゃん浴衣着るのにめっちゃ気合入ってたもんね。一体誰に見せたかったんだか……」

「そ、そんなんじゃないですっ! じゅ純粋に浴衣を着て夏祭りに来たかっただけですから! 違いますからねお兄様!」

「お、おう……」

「で、でもなぜ私だけ浴衣なんでしょう? さくらちゃんも亜季乃さんも浴衣着てくると話に聞いていたのですが……?」


 そう言えば浴衣を着ているのはしほりんだけだった。桜玖良は白いTシャツに短いジーンズで野球帽みたいな帽子をかぶっていて、ぱっと見男の子かよって感じの格好で、でも近くでよく見ると可愛い、いやそんなことはない。ないぞ、あと脚露出させすぎなんだよお前、ちょっと太もも出すぎてて、健康的なんだけど、うーん、その……いや、何でもない。亜季乃の格好は、うん、どうでもいいマジで。


「えーと、着付けとかちょっとよくわからんかったし? てへ?」

「ウチは、今日のしほりん様の御雄姿をこの目に焼き付けるのに集中したかったのでっ! ちょっと慣れない服とか下駄とかでToL〇VEるのは避けたかったというかぁ、てへ?」

「お兄様は……?」

「いや、そんな俺浴衣とかもってないし……」

「そもそも兄貴、夏祭り自体初めてなんじゃね? 毎年毎年勉強ばっかで部屋に引きこもりってたんだから」

「そっかあ、高2にもなってようやく夏祭りデビューなのね? ぷぷっ」

「いやいや、お前が小さい時とかお守りで何度かついていってやっただろ?」

「ぜんぜんおぼえてないにゃー」


 くっ、亜季乃のヤツめ。しらばっくれやがって。


「でも残念です……お兄様の浴衣姿、見たかったで……はっ! 私今何を!」


「あれぇ~しほちゃん、こんなヤツの浴衣が見たかったんだぁ、へぇ~?」

「ちっ違いますっ、い、いや違わないかもですけどゴニョゴニョ」

「し、しほりん様っ! こんなクソできそこない兄貴の浴衣なんて見すぼらしすぎてしほりん様には見せられませんっ! でもしほりん様がそうおっしゃるなら来年は兄貴の浴衣を用意させますのでっ!」


 あれ、俺の了解は?


「よかったですねお兄さん? これで来年も私たちと一緒に夏祭りに行けますねw」

「うーん、うん、嬉しいなー」

「ちょ、ちょっと皆さん? 早く中に行きましょう。もうお祭りは始まっていますよ!」

「そうよね、こんなとこで油売ってる場合じゃないわね」

 いや、主に桜玖良のせいな気がするんだが……言わないけど。

「はぁい、しほりん様。こちらですー足元にお気をつけてくださいねー」

「あ、ありがとうございます……」


 石畳の道の両側にはたくさんの屋台が並んでいた。さっきまでのやりとりは一体何だったのか。女性陣はもう美味しそうな食べ物に気がそぞろである。


「うーん、どれも美味そうなんだけどぉ……じゅるり」

「亜季乃、はしたないからやめなさい」くぎを刺しておく。

「でも、私もおなかがすいてきました……」

「じゃあみんな好きなモノ買ってきましょうよ、それでみんなでシェアすればいいんじゃない?」

「わぁ、さくらちゃんナイスアイディア!」

「もちろんそこは、お兄さんのおごり、で・ね?」

「……まあいいけど。お祭りだし」

 それにしほりんの前でケチなところは見せたくないっ!


「で、お前ら何買うんだよ?」


「「「「「チョ焼りんコバわたかきナナご飴氷そばがし」」」」」


「いや、わからんわ……って、えっ?」


 やたら声の主が多い気がしたが、勘違いではなかった。俺たちの目の前に見知らぬ少女が2人立っていたのだった。


 お、お前らは……一体?


 To be continued・・・
















 本当はとある君〇名はのモデルとなった湖で行われる花火大会に行く予定だったのが台風と金欠のせいで行けなくなった、その腹いせに急遽書いてみたくなったので書いたw 他に書かないといけないものがいくつかある気がするが、そんなのは知らん。ちっくしょー。本編もそろそろ書くか……



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