竜堂一華の大学入学(3)
一華が慶就大学に入学してから数日後、俺と一華は大学内のカフェにて履修登録のために授業選択をしていた。
普通こういうのって同学年の友達とか先輩とかと相談しあってするものじゃないの?……あ、そうか。俺って一華の許婿だけどそれ以前に一華にとって一学年上の先輩だったわ。
でも一華は新入生なんだからこの時に友達を作っておかないといけないのに…。
相変わらず俺以外どうでもいいという考えしてるなぁ。
一華にちゃんと友達ができるのか……楽しいキャンパスライフを送れるのか……お兄ちゃんは心配だよ…。
……あ、一華の交友関係といえば……。
「なぁ一華、男共からしつこく声かけられたりしてないか?」
高校入学の時でもそうだったが、一華はその圧倒的な美貌(+胸)にのせいで入学初日から男共に声をかけられまくっていた。
とくにここ慶就大学は日本きっての難関校の1つ。勉強ばかりの生活に疲れ果てた人が自由を求めてはっちゃける事も少なくない。
難関校だからってチャラ男がいないわけじゃないのだ。
逆に難関校だからこそ計算高くてズル賢くてはっちゃける度合いを知らないチャラ男がいたりする。
仏様や神様じゃないんだからこの世に完全で完善な人間なんて存在しない。
俺だってもしも一華が美少女じゃなければこんなに頑張れなかったかもしれない。
天才だろうが秀才だろうが凡人だろうが煩悩はあるんだよ。
「男共には声かけられますけど……それでも高校入学の時よりは格段に少ないですね。やっぱり入学初日にお兄様に抱きついたのが効果的だったようです」
「あぁ…うん、そうだろうね……」
一華曰く、入学式でのあの行為には『私はもうお兄様のものなんだから有象無象共はチョッカイをかけてくるな』という事を男共に示すためにやったらしい。
ちなみに今やってる授業選択を2人きりになれる家ではなくわざわざ多くの学生が集まる学内カフェでやってるのも同じ理由だ。
モテる人にはモテる人なりの悩みがあるものなんだよな。
ただ……あの日以降俺に向けられる殺気が途切れないんだよねぇ…。
現に今だってほら、めっちゃ注目されてる。男達が殺気立った眼で俺を見てる、てか睨んでる。
……まぁもうとっくの昔に慣れたけどね。
ただ一度だけゴルゴ13みたいな人にガン飛ばされた時はマジでビビった。一華の前だったからなんにもないように振る舞ったけど正直冷や汗がハンパなかった。
「それに……」
「ん?」
「それに一華がお兄様のものだと示すだけじゃなく、お兄様も一華のものだと示す必要がありましたからね。……敬
「………そだね」
……よくそんな前の事覚えてるなぁ…。まぁその後いろいろあり過ぎたから記憶に残ってるっちゃ強烈に残ってるけど。
それと俺、敬愛する先輩のくだりのとこ口に出して言ってたっけ?
てかその時間帯って一華は入学式の最中じゃなかったっけ?
「えっと一華?勉強合宿の時の女の子はあれから何もないし敬愛する先輩ってのは……その……ただの表現だからな?尊敬してるだけだからな?」
「えぇわかってます。ちょっとした冗談ですよ」
「そ、そうか、そうなのか。それならいいんだ…」
「はい、そうです。そうなのです」
そう言って笑い合う俺と一華。
だけど俺には一華が冗談を言っているようには見えなかった。
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