俺と許嫁のヤンデレ幼馴染との日常
「お兄様、明日一華と結婚式を挙げましょう」
体育祭から数日後の休日。
いつも通り俺の部屋で2人でごろごろしてたら急に一華がこう言いだした。
「………はい?」
「いえ、ですから明日一華と結婚式を挙げましょう?と言ったのです」
「いや、うん、それは聞こえてるんだけど……急にどしたの?」
確かに俺は一華の許婿だ。
結婚を前提にしたお付き合いどころか、結婚が確定したお付き合いをしているから近い将来一華と結婚式を挙げる事は決定しているんだけど……それは『近い将来』の話だ。少なくとも明日ではない。
というか
一華が飛び級でもしない限りあと5年は俺と一華は結婚できないのだ。
……5年って長いな。
「実はこの本にこう書いてあったのです」
そう言って取り出したのは……女性用の恋愛雑誌?
……一華がこんなの読むなんて珍しいな。
「一華ってこういう恋愛雑誌は嫌いじゃなかったっけ?」
「読まないだけで別に嫌いじゃないですよ?ただ私が知りたいのがそこらの有象無象共を誘惑する方法じゃくて、お兄様ただ1人と一線超える為の方法だったってだけです」
「なんか今すごいの聞いたような気が…。でもそれならなんで急に読もうと思ったんだ?」
「それは……その……」
急にしおらしくなる一華。
……何があったんだろうか?
「その……先日体育祭があったじゃないですか」
「あぁそうだな。……まさか学校を卒業したのに一華とフィナーレダンスを踊れるなんて思ってもなかったからかなりビックリしたよ」
「……え?思ってなかったんですか?」
「………オモッテタヨー」
「……まぁいいです。その話は後でゆっくりじっくりねっとり
「………はい」
「話を戻します。フィナーレダンスを
「ほうほう」
「……で、頼まれたんですよ。『どんな些細な事でもいいからモテる方法を教えて!』って。生徒会メンバー全員に」
「……あ〜、なるほど」
一華は超大手株式会社『RUDE』の社長令嬢だ。直接後は継がないものの、会社経営や帝王学といったものを
そんな一華に貸しを返さないという選択肢はない。
……でも……しかし……一華に恋愛相談かぁ…。
「一華が知ってるのはお兄様を堕とす方法であってそこらの有象無象共を落とす方法ではないので……だからこうして
「なるほど」
「それに……その……自分で言うのもなんですが、どうやら一華の恋愛観は他の人とはズレているみたいで…」
「そうだね。その通りだね」
「え?」
「………一華は他の人よりも愛が重……想いが深いってこと!!他意はなし!!」
全力で補足する。そして全力で言い換える。
さすがに自分と普通の人との恋愛観がかなりズレていることは自覚あったのか…。
なんかいつも愛のためなら常識なんていらない、私達の恋路を邪魔する社会こそが間違っているみたいな考えのもと行動してるっぼいから周りなんて見てないのかと思ってた。
……『みたいな考え』っていうか昔の一華はマジでそういう考えしてたよなぁ…。
大学を卒業してからじゃないと結婚させないっておじさんに言われた時の一華はほんとヤバかった。実の父親すら殺しかねない眼をしてた。
そう思うと昔と比べて今の一華はずいぶんと丸くなったというか周りを見るようになったなぁ…。成長を感じるよ。
……それでもたま〜にもの凄くヤバイオーラを感じる時があるけど…。
「まぁそんなわけで
「たとえば?」
「雑誌の中で少女漫画が連載されていたのですが……そこで主人公の女の子が今までただの友達だと思っていた男の子に壁ドンされてキュン♡ってなってる描写があったんですよ。一華には男の友達がいないし金輪際作る気もないので詳しくはわからないのですが、普通好きでもない男に壁ドンされたら嬲り殺……殴り飛ばそうと思いませんか?」
今までただの友達としか見ていなかったのに急に好意をぶつけられてドキっ♡
……ってやつか。
なるほど、確かに少女漫画ではよくあるやつだ。まぁ俺そんなに少女漫画見た事ないけど。
「それはだな……実は主人公の女の子も男の子をただの友達だと思い込んでいたけど本当は好きだったってだけだな。男女の間では友情なんて成立しないんだよ」
「自分の恋心に気づかないなんてあるのですか?」
「あるんじゃないかな?全員が全員運命的な恋をしているんじゃないし、小さな好意が積み重なって恋に発展した……ってのも普通にあると思う」
こういう気持ちは俺と一華には一生わからない気持ちだ。
一華は生まれた時から俺が好きだったって言ってるし、俺も恋心が芽生えた時期には当たり前のように一華を好きになっていた。
だから徐々に好きになるって気持ちはわからない。だって最初から好感度MAXだったんだから。
「お兄様がそう言うのならそうなのでしょう。一華も
「それは『恋は盲目』って言うんじゃないかな?」
一華なら俺が髪についている芋けんぴをとって食べただけでキュンキュンするんじゃないかな?ってさえ思う。
……というかその漫画の男の子顎クイまでしてたのか。がっつき過ぎだろ。
自分にどれだけ自信があったら彼女でもない女の子にそんな事できるんだよ。羨ましいなこの野郎。
「話を戻すけど……結局生徒会メンバーに教えられるような恋愛テクニックはわかったのか?」
「それなんですが……ただ教えるだけならこの雑誌を渡せばいいだけなんです。でもわざわざそれを一華に聞いてきたってことは、一華にしかわからない事があるからだと思うんです」
「一華にしかわからないこと?」
「えぇ、たとえば……実際にその恋愛テクを使えば相手の反応はどうなるのか…とか?」
そう言うやいなや一華は俺の左腕を自身の豊満な胸で挟み込むようにして抱きついてくる。
その瞬間、俺の左腕はこの世で最も幸せな身体の部位となった。
「うおぉぉおおお!?いい、一華!?急になにしやがるのでございまするか!?」
「敬語……ではギリないですね。許してあげます。それで、なにって言われましても……雑誌に書いてあった恋愛テクを実際に試しているだけですよ♡」
すると今度は脚まで絡めてきた。
ちなみに今の一華の服装は外では絶対に着ないような超ミニスカート。俺が長ズボンとはいえ……見た目と感触が……!!
これも雑誌に書いてあったことなのか…?
………嘘だッ!!あんなピュアッピュアな少女漫画を載せる雑誌がこんなアダルティな恋愛テク……というか誘惑テクを書いているわけがない!!
しかし俺は実際にその恋愛雑誌を読んだわけじゃない。だから絶対に違うとは言い切れない。
だから……俺は一華の行動を拒めない。
つまり一華は俺を堂々と誘惑する口実を見つけたのだ。
……決して俺がこの状態のままでいたいと思ってるからってわけじゃないぞ?違うからな?
「えいっ♪」
「ぅおうっ!?」
そんな事を考えてるあいだに俺は一華にベッドに押し倒された。
そして一華は仰向けになった俺の上で馬乗りになり、服を脱ぎはじめた。
……いやいやいや!!さすがにこれはやりすぎだろ!こんなのがただの恋愛雑誌に書いてあるわけないだろ!!
もし書いてあるとしたらそれは大人の恋愛雑誌だ!!
「さぁお兄様……今から一華と既成事実を作って……明日結婚式を挙げましょう?」
「まてまてまて!?話が急すぎる!!最初にも言ったがなんでそんな早急に結婚式を挙げようとするんだ!?」
「それは……こちらをご覧ください、お兄様」
そう言って見せられたのは例の恋愛雑誌。
一華が開いているページには……『憧れの彼といろんなものをおそろいにして距離を縮めよう!』と書いてあった。
………おそろい?……まさか…!?
「というわけで手っ取り早く名字をおそろいにしようかな、と。どうせ数年後には同じ名字になるんですし」
「そのまさかかよ!!」
というか数年後同じ名字になるのは確定してるんだからそれこそ我慢してよ!
「嫌です。もう我慢できません」
心を読まれた!?
「それではお兄様♪一華と特別な夜を過ごしましょう♡」
「ちょっ!?一華、落ち着け!!それに今は昼……!!」
「大丈夫ですよ、明日の朝まで続きますから。そこで少し睡眠をとったらまたその繰り返しです。一華のお兄様への想いがたった一晩で全部伝えられるわけないでしょう?」
「朝まで!?しかも何日も!?いやいやまてまてまて!!学校だってあるだろう!!」
「休めばいいんじゃないですか?それにほら、彦星と織姫だって仕事を休んで肉欲に溺れたそうですし」
だから天帝に引き離されて1年に1回しか逢えなくなったんだよ!BADエンドじゃねーか!!
ダメだ……今の一華は完全に暴走してる。
この前見た謎のピンク色のオーラが出てるし、その瞳にはハートマークがある。
これほんと、どうやって出してるんだろうか。幻覚にしてはやけにはっきり見えるんだよな。
……いや今そんな事考えている暇なんてねーよ!
幸いこの前みたいに拘束されてはいないし、一華の暴走はたまにある事なので慣れ……はしないけど対処法は知ってる。
一華を精神的な意味か肉体的な意味で満足させればいいのだ。
ただし
ある意味これは俺と一華の真剣勝負だ。
「では……いきますよ、お兄様♪」
「……おぅ、こいや一華ァァァ!!」
覚悟を決める。
俺の、俺達の戦いはこれからだ!
…………………
……………
………
こうして、俺と一華の慌ただしくも幸せな、楽しい時間は過ぎていく。
そして、これから先もこんな日々は続くだろう。
俺は一華の許婿であり、一華は俺の許嫁だ。
しかしこの関係は5年後には変わってしまう。
でもその時は……今よりもっと騒がしく、慌ただしく、そして……楽しくて幸せな日々になっているに違いない。
でもそれは今はまだまだ先の未来。
だから今は、今はこのヤンデレ幼馴染との許婿と許嫁の関係を精一杯楽しむとしよう。
俺と許嫁のヤンデレ幼馴染との日常はこれから先も続いていくのだから。
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