MVP
『それでは結果発表です。優勝は………1年、C組。2年、B組。3年、B組です。おめでとうございます!!』
『ウワァァァアアアアア!!!』
全ての競技が終わり、結果発表が終わった。
一華の在籍するB組は見事優勝。ちなみに一華は1年の時も2年の時も優勝を経験している。
……だって一華のいるクラスっていつも士気がハンパないもんなぁ…。
カッコイイとこを一華に見せるために男子達は死ぬ気で頑張ったんだろうなぁ…。
でも肝心の一華はクラスメイトの活躍なんて全く見てなかったけどな。
『続いて、今大会のMVPの発表です』
—————ッ!!
MVP……確かあの時集まっていた『竜堂一華親衛隊(非公式)』がMVPを取った者が一華にダンスを申し込むって言ってたな…。
俺が一華の側にいたからってのもあると思うが、今まで一華は誰からもダンスを申し込まれていない。
つまり一華に気がある男達は皆、このルールを知っていたということだ。
だから相手が誰であれOKするはず。
つまり……MVPに選ばれた者が一華と踊ることができる…!!
運動場全体が緊張による静寂に包まれる。
そしてついにMVPが発表された。
『今大会のMVPは………3年B組の
「ぃぃぃいよっっしゃぁぁぁあああああ!!!」
巻き起こる叫びの嵐。
ただし1人以外は無念の悲鳴だ。
それにしてもMVPを取った高嶺って奴は3年B組……一華と同じクラスかよ。なにちょっと運命的にしちゃってんだよ。まぁ優勝したクラスからMVPが選ばれるのは何も珍しい事じゃないんだけどさ。
ってことはあいつが一華と踊るのか…。
遠くから見た感じだけどいい感じの細マッチョだな。サッカー部とかにいそう。脂肪がないかわりに筋肉もない俺とは大違いだ。
顔もいい感じにイケメンだ。汗かいてるのになぜな爽やかそうに見える。
MVPに選ばれて雄叫びを上げていたが暑苦しい奴には見えないな、きっとただノリがいいだけだろう。
……あれ?俺より
いやいや、そんなことは……ない……とは……いいがたい……かも……しれない……かも……?
ままままぁ落ち着け、俺。かもかも言ってる場合じゃないかも。
言い方は悪いが一華にとって高嶺は1日だけ……というか1時間だけの関係だ。
そんなに慌てるようなものでもない。
それに一華が誰と踊ろうが一華の許婿はこの
それは金輪際変わることはない。
だからここは大人らしく見事MVPとなり一華と踊れる権利を勝ち取った彼を祝福しようじゃないか。
………うぅ、腹が痛くなってきた…。
その後熱狂に包まれた一華の閉会の挨拶が終わり、一華の出番が終わったことで静寂に包まれた体育祭実行委員長の閉会の挨拶が終わった。
これからおよそ10分後ぐらいにフィナーレダンスパーティが行われる。
その間に参加者はペアを決めるのだ。
つまり……この間に一華はあの高嶺にダンスを申し込まれるのか…。
………うぅぅ、また腹が痛くなってきた…。
少し落ち着ける場所に移動しよう…。
そうだな……体育館裏とかかな。
体育祭は運動場で開催されてて体育館は使わなかったから人はいないはず。
だから一華との待ち合わせに体育館裏が指名されてたわけだし。
というわけで体育館裏に向かう。
………ん?
体育館裏で声が聞こえる…?
そんなバカな、今日ここに用事がある人はいないはずだ。
体育祭は確かに閉会式を終えたが、まだフィナーレダンスが残っている。後片付けはその後に行われる予定だ。
つまりそこにいるのは生徒会や体育祭実行委員ではない。
つまり……そこにいるのは俺と一華みたいに人気のないところで会いたかったから…?
・これから僅か数分後にフィナーレダンスが行われる
・フィナーレダンスにはなんか色々恋愛に関する伝説がある
・人気のない体育館裏
これらのことを考えると……これから好きな人にダンスを申し込むためにここにいる可能性が高い…!?
うわぁ……青春だー……青春だなー…。
他人の恋路を盗み見るのは野暮というもの。だからここは知られぬ内にここから立ち去るのが紳士というものだ。
……なんて殊勝なことをオレが考えるわけもなく、普通に気になるから心に素直に覗き見することにした。
罪悪感?好奇心には勝てなかったよ…。
……………。
……………ッ!?
「アイツは…!!」
そこにいたのは—————
「竜堂さん!僕と……ダンスを踊ってください!!」
———今年の体育祭のMVP、高嶺禊と一華だった。
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