第28話「【タイマー】は、不穏な話を聞く」
「もう一つ、ルビンさん」
「はい? まだあるんですか?!」
さすがに情報過多にもほどがある。
「はい。申し訳ありませんが、むしろ、こちらが本題だと思っていただければ……」
セリーナ嬢は話しにくそうにしつつも、ルビンの動向をチラチラと窺っている。
どうやら、これまでの話はこの本題に切り出すための布石だったようだ。
「───……わかりました。聞きますよ」
「は、はい。その……」
珍しく口を濁すセリーナ嬢。
どうやら本当に言い辛いようだ。
「大丈夫ですよ、何があってももう驚きません」
「で、ですか? なら……」
ゴクリと、セリーナ嬢の綺麗な
「───ルビンさんの【タイマー】が使うスキル? ですが、それに該当するものが一つありました」
「え? さっき、ゼロって……」
「はい。天職にはありません。ですが、別の観点から見た場合、合致するものがありまして───」
別の観点?
天職以外に何が───……。
「
た、
「
突如素っ頓狂な声をあげたルビン。
ギルド中の目はもちろん、ギルド憲兵隊もジロリと睨む。
「しーしーしー!!! 驚かないって言ったじゃないですかぁ!」
「驚くわ!!」
驚かないでか!?
「だから、しー!! しー!! あ、あははは。憲兵小隊長殿、なんでもないでーす」
ジロリと胡乱な目を剥ける憲兵隊に愛想を振りまくセリーナ。
だけど、顔面からは冷や汗がダーラダラ。
「る、ルビンさ~ん。もう、大きな声出さないでくださいね……」
「あ、あぅ……手ェ離して」
いつの間にセリーナ嬢によって口をギリギリと挟まれていたルビン。
…………あるぇ? この人強くない?
「もう……。こっちが驚きましたよ」
「すみません」
素直に反省するルビン。
だけど、急に禁魔術の話なんて出てきたら誰でも驚くよ。
「はぁ。まぁもう今さらですけどね……」
そう言って天井を仰ぐセリーナ。
彼女の言う今さらというのは、ルビンが乱発した「タイム」のことだろう。
別に隠すものでもないと思って、衆目下でバンバン使った気がする。
エリックやアルガス。そしてギルドマスター。
そこには多数の目撃者もいたので、本当に今さらだ。
ギルドが緘口令を敷いてくれるわけでもなし……。
「う……なんかすみません」
「別にルビンさんが悪いわけではありませんが、その例の【タイマー】のスキルですか? それは……」
「えっと、『タイム』のことですよね?」
発動したら、その目標となった人物や魔物をの時間を停止してしまえる、恐ろしく強力なスキル。
それが「タイム」だ。
「え、えぇ。そのタイムのことです───それは、一見して時間を止める魔法のようにも見えますが……」
「魔法? いえ、そんなものじゃ……。いや、どうなんだろ?」
使っているルビンにもよくわからない。
ただ、一定時間対象の時間を止め、ある程度任意にそれを解除できるということくらいしか……。
「はい。それを魔法として見た場合───禁魔術の中にある「時間魔法」が該当するように思えます」
「時間魔法って……タイムが?」
時間魔法と言えば伝説の魔法だ。
やれ大昔に悪い魔法使いが人々の時間を奪おうとしただの。
悪の王様が若返るために時間を操ろうとしただの。
未来を見たくてしょうがなかった青年が時間を操ってあっと言う間に老人になってしまっただの。
まーロクな話がない。
ようするに、教訓をあたえるだけの戒めのお話の類だと思っていたけど……。
「あるの? 時間魔法って?」
「…………あります。ほんの一部だけに伝わっているそうですが、確かにあります」
うそ。…………マジ?
「そして、その魔法は禁魔術に指定されており、使用者もしくは研究者は厳しく取り締まられます」
「と、取り締まりって誰に……」
ゴクリ。つばを飲み込んだルビンはなんとなく周囲を見回す。
離れた応接スペースには誰も近寄らないけど、極秘話をするような場所か、ここ?
「もちろん、エルフです」
え、エルフ?!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます