魔法具入手
「魔人を討伐してくれたか。さすがだな」
冒険者ギルドのギルドマスターである--バルナーツは、腕を組んで片方の手だけを上に向け、そこへ顎を乗せながら感心した様子を見せる。
「それで、報酬はもうありますか?」
「あぁ。用意している」
バルナーツは指から指輪を外し、目の前のテーブルにコトリと置いた。
「え? まさかバルナーツさんの魔法具が報酬ですか?」
「そうだ。儂が現役の頃からずっと使っているものだ。性能は保証しよう」
「少し調べてみても?」
「もちろんだ」
「それでは--『
【王者の指輪】
効果1:魔法の効果が二割向上
効果2:魔力消費が二割軽減
効果3:魔力回復速度が二割向上
「なるほど……これは確かに良い物ですね」
「問題ないか?」
「むしろもらいすぎでは?」
バルナーツは「呵々っ」と笑うと
「良いんだ。儂が使うことはもうほとんどない。それなら若くて実力も確かなお主に使われたほうが、そいつも本望だろう」
「そうですか……それでは遠慮なく」
「あぁ、その代わりと言ってはなんだが、またお主にしか頼めんような依頼があれば頼みたい」
「えぇ。いつでも、というわけにはいかないかもしれませんが」
「分かっている。
「分かりました。それでは俺はこれで」
ルシウスは小さく礼をすると、バルナーツに背を向けて部屋を出て行った。
(これはかなり得した気がするな)
実際にこれほどの魔法具を金で手に入れるとなれば、一体いくらの値がつくのか分からない。
(よし、次はオークションだ)
◆
隊員全員の魔法具をオークションで揃えた一行は、ルシウスの研究室で落札した魔法具を机に広げていた。
「結構いいのが揃ったな」
【封魔の指輪】所有者:エリーゼ=エマニエル
効果1:魔力を保管※最大容量500000
効果2:魔力消費が二割軽減
【識者の耳飾り】所有者:アリス=ワーグナー
効果1:魔力消費が二割軽減
効果2:魔法耐性が二割向上
【リッチの指輪】所有者:マルグリット=アグネリア
効果:魔法の効果が三割向上
【鬼人の腕輪】所有者:ラレーナ=ベルナベル
効果:強化魔法の効果が五割向上
【小鬼王の首飾り】所有者:レウス=ライマール
効果1:自動治癒(小)
効果2:魔力回復速度が二割向上
【吸血鬼の牙】所有者:イザベラ
効果1:近くにいる敵性生物から魔力を吸収
効果2:魔力消費が二割軽減
【
効果1:魔力消費が五割増加
効果2:魔法の効果が倍加
「その分軍資金もほとんど残ってねぇけどな」
イザベラが吸血鬼の牙を飾りにした首飾りを手にとり、笑みを零して見つめている。
「ギルドでもらったこの指輪は?」
レウスが横に避けられていた王者の指輪を指さしながら問いかける。
「ルウが受けた依頼で手に入れたんだからルウがつけたらいいじゃない」
「私もそれでいいと思う」
アリスや他の隊員達もそれに異論はないと頷いている。
「首飾り二つはやっぱり効果なかったね」
アリスの言う通り同じ場所に装着すると、反発しあうのかどちらの効果も発揮されなくなったのだ。
ただし、腕輪の場合は右手と左手に一つずつ、指輪は隣の指輪と干渉しないように、最大で右手と左手に三つずつ装着することができたのだ。
つまり、恐らくは他の魔法具と接触すると、反発して効果が発揮されないということだろう。
「ルウの魔法具は効果はすごいですけど、デメリットもすごいですね……」
マリーが赤石のペンダントを手にとって光に翳している。
「でもルウの魔力なら、効果的に使えそうよね」
「ルウがどんどん強くなってくー!」
「確かに消費はあがるけど、それ以上に効果が大きいな」
今のルシウスの強化に赤石のペンダント、王者の指輪の効果ものせると、下記のようになる。
『
魔法属性=雷火
形状=纏
特殊=麻痺 火傷
魔力減衰=2
持続魔力=945
強化=18000×2×2×1.2
魔力=4608000
速度=3000×2×2×1.2
赤石の効果で魔力消費が五割増加しているが、他二つの魔法具で魔力消費が軽減されている。そして以前に比べてもかなりの強化値を設定することができる。
「今アグニとやったらどーよ?」
興味津々といった様子でレウスが尋ねる。
「ふむ。今なら我も全力を出せるかもしれんな。ただ精霊化の持続時間がまだまだではあるがな」
「そうなんだよなぁ……あの真祖を素材にして魔法具作れてればなぁ」
ルシウスは悔やむように思い出す。あの真祖を滅するためには仕方なかったとはいえ、完全な消し炭となってしまったため、素材にする部位が何も残っていなかったのだ。
「まぁ仕方ねぇよ。そんなこと気にしてたらあのクソヤローは再生しやがるだろうしな」
「分かってるさ……でも深淵とは言わないまでも、近いやつを素材にした魔法具は手に入れておきたいところだな」
精霊界でまともな戦力になるのは、現状ルシウスとその召喚する精霊、アグニだけである。
さすがにこれでは精霊王に、各属性の大精霊、その他の上位精霊に下位精霊を相手にすることはできないだろう。
「それなら丁度いいじゃねぇか」
「何が丁度いいんだ?」
「竜王のとこにいくんだろ? どうせ上位の竜族がいるだろうぜ」
「なるほど……だけど竜王もその取り巻きがいるから困ってんだよなぁ」
「そこまで心配するこのはないと思うぜ」
「なんでだよ?」
深淵の竜王はもちろん、上位の竜族もかなりの強さをもっているだろう。ダンジョンにいた知能の低い赤竜その他とは、当然比べものにならない。
「各属性の頂点といわれてる属性竜。そいつらはそれぞれ違う場所を住処にしてるはずだぜ」
「あ、聞いたことあるかも。確か風竜は東の峡谷にいるとかって」
「あぁ。一番近ぇのはそこだな」
「そこならそいつらしかいないんだな?」
「あぁ。それに素材が手に入りゃいいんだろ? なら倒す必要もない。素材だけ手に入れて逃げりゃいんだからな」
「なるほど……! 確かに言われてみればそうだな」
「じゃあ次は東の峡谷を目指すのね?」
「あぁ。魔法具を揃えるぞ!」
「おー!」
レーナがノリノリでシャドーをしている。他のメンバーも自分の魔法具を手に入れたことで、やる気に満ちている。
「それじゃ、明日出発だ」
「「「「了解!」」」」
白雷隊の強化計画が順調に進んでいく。そしてその間も精霊界の魔力は溜まっていっていた。
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