二度目の遭遇
「ところでルシウス、金もってんのか?」
「……お金?」
しまった。そりゃそうだ。魔法具みたいな神アイテムが安値で売ってるはずがない。ある程度は持ってるけど不安だ。
「ないのね……っていうか狩った魔物はどうしてるのよ? 売ってないの?」
ないわけじゃない。不安なだけだ。
「あ、全部持ってる」
「え? どこにそんなの置いてるの?」
首を傾げるアリスはとても可愛い。まるでお人形さんだ。
「異空間に入れてるんだよ」
「……まぁルウだものね」
「ルウだしねー」
「ルシウスじゃ仕方ねーな」
「ルシウス君ですから」
なんだよみんなひどい。俺はそんなに世間知らずだったのか……
「その様子じゃ冒険者ギルドにも登録してないのね?」
「うん……」
冒険者ギルド……やっぱりあったんだ……
「普段どうしてたんだよ?」
「え、一応白雷隊に所属してるから、給金もらってるよ。てかみんなももらってるでしょ?」
「……ルウ、聞きたいんだけど、私たちが白雷隊に入隊したこと、陛下には報告してるのよね?」
「え……?」
あ、やばい。エリーの顔が般若のようだ。これはもしかして俺しか給金入ってない……? やばい報告してないじゃん。あ、やばいわー、死んだわー。
「「「「「ルウー!!」」」」」
「ごめんなさい!」
俺はとても綺麗なジャンピング土下座を決めた。
◆
「陛下にはすぐ報告します」
「当たり前よ! 私はてっきり学生のうちは出ないのかと思って、訓練の空いた時間とか休みまで使って稼いでたんだから!」
「ボクもだよ!」
「ルウ君ひどい……」
あぁ! アリス! 違うんだよ! 違わないけど違うんだ! これは悲しい事故なんだ!
「そりゃいいんだけどよ、入隊したときに遡ってもらえんのかね?」
「それは気になりますね」
「陛下に聞いてみます……」
「よろしい。魔法具店は付き合ってあげるから、その後すぐ聞いてきなさいよ」
「はい……」
なんて情けない隊長だろうか。俺が悪いんだけど。っていうか訓練だって対
つまり仕事をしていたのに給金ゼロだったわけだ。そりゃみんな怒って当たり前である。しかも俺だけちゃっかりもらってるなんて悪魔か俺は。
「それで、給金もらってるならお金はあるんじゃないの? いくら貯金あるのよ?」
「えっと、確かあと金貨100枚くらいだったかな?」
「「「「「はぁあ!?」」」」」
ひぃっ! ごめんなさいごめんなさい。みんなももらってると思ってたの……
「一応聞くけど、金貨の価値分かってる?」
「あんまり……」
一応給金とし金貨はもらってるけど、普段使うのは銅貨とかだもんなぁ……
「はぁ……騙される前にわかって良かったわ。説明するからちゃんと聞いてよね」
「はい!」
エリーの抗議の結果、とんでもないことが判明した。
銅貨十枚=小銀貨一枚
小銀貨十枚=銀貨一枚
銀貨十枚=小金貨一枚
小金貨十枚=金貨一枚
金貨十枚=大金貨一枚
大金貨十枚=白金貨一枚
ちなみに銅貨一枚でりんごが一つ買える。まぁざっくり百円くらいとして……金貨一枚でひゃくまんえん!?
それがひゃ、百枚だから…い、いちおくえん!? っていうか白金貨頭おかしいだろ! 一枚で一億円って何に使うんだよ!
「すいませんでした……」
「はぁ……それは陛下に言ってくれるんだしもういいわよ。それならお金の心配はいらないから、魔法具店に直接いくわよ」
「ごーごー!」
俺はとても小さくなりながら、みんなの後についていった。
◆
「金貨三枚!?」
三枚って三百万円だぞ! しかも全然大したことない能力……なんだよ魔力を少し溜められる指輪って。試していいっていうから試してみたら10000くらいしか入らなかったぞ。そんなもん溜めてどうすんだよ。
そんなカスみたいな能力で三百万円とか有用なのはどんだけすんだよ……
「ルウ君、10000の魔力って、普通の魔術師にはかなり高いよ?」
あ、そうか。宮廷魔術師だった母さんも俺が説明する前は13万くらいだったもんな。それを考えれば1万の貯金は悪くないかも。俺の割合で言えば12万ちょいってことだもんな。俺の身体強化3、4分くらいってやっぱ微妙じゃねえか!
「魔力消費下げるのとか、魔力の効果あげるのはないのかな」
「それはかなりレアなやつだから、一番奥のほうじゃねぇか?」
レウスの言葉でゾロゾロと店の奥へ入っていく。
「ほら、これとか」
なになに……魔法効果増強か。でもこれじゃどれだけ効果があるのかわからないんだよなぁ……あ、ちょっと前に改変した鑑定なら分かるかも。
『
【賢者の腕輪】
効果:魔力消費を二割軽減する
二割!! とても素晴らしいじゃないか! 180万消費の身体強化が、144万で発動!? 持続魔力も600から480に!
継戦時間にして40分弱だったのが、なんと61分!夢の一時間越え! なんて素晴らしいアイテムなんだ!
「買います!」
「これはこれは。お目が高い」
む? 店主か? こういう商人はぶくぶく太っているイメージだったんだが、スラッとしたイケメンだ……
「ルウ、これ値段書いてないわよ」
あ、ホントだ。あー……こういうのって大体やばいやつだよな……
「お、おいくらですか?」
「金貨50枚でございます」
ごせんまん! ごっせっんっまんえん! 腕輪一つで! 魔法具こえー! 高すぎんだろ! 確かに効果は望外の素晴らしいものだったけど……まぁ仕方ないか。命には代えられない。
「……買います」
「ありがとうございます」
満面の笑みを浮かべる商人が、悪魔に見えた。商人怖い。またのお越しをお待ちしておりますとにこやかな笑みで送り出してくれた商人を背に店を出た。お金貯めないとなぁ。
「もしかしなくても、アリスのそれもかなり高い?」
アリスの魔法具は確実に有用なものだ。俺が今購入した賢者の腕輪にも引けはとらないと思う。
「えっと、私のはお母さんから引き継いだものなんだ。だからいくらなのかは知らないの」
なるほど。そりゃこんないいものだったら継承して子に繋いでいくのは当然か。
……あれ? うちは宮廷魔術師の母さんがいるのに、こういうのなかったのかな……? いや、考えないようにしよう。何か良くない気がする。
あれ、なんだあの大男……なんか嫌な感じがするな……ちょっと見てみるか。
『
ネイガウス(偽名)
〈吸血鬼の真祖〉
魔力=2685600
状態=変化
待て……待て待て待て! 吸血鬼の真祖!?
しかも魔力268万だと? 確実に
ってかなんで町中に普通に
「ルウ君? どうしたの?」
「お前らは先に帰っててくれ」
「ちょっと、ルウは陛下のところに行くんじゃないの?」
「あとで必ず行く。今は帰っててくれ。頼む」
「……はぁ。わかったわよ。そのかわりちゃんと後で説明してよね」
「説明を要求するのだ!」
「なんかわかんねーけど、気をつけろよな?」
「ルウ君、何かわからないけど、危ないことはしないでね」
ごめん。危ないことは分かってる。けどあれをこのまま放っておくわけにはいかない。一緒にいる人たちがあれの正体を分かっているとも思えない。
「悪い。後で絶対説明する」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます