オリジナル魔法

「ルシウス、じゃあお願い」


「分かりました」


 よし、使うぞ。あのやばめのやつを。

息を整えて、魔力を高める。そして魔法名を唱える。


絨毯ブレイズ=イ爆撃グニッション


 魔法名はなんでもいい。自分がイメージしやすいようにつけているだけだ。詠唱は邪魔だったが魔法名まで唱えないときっかけがなくて発動しにくかったのだ。絨毯爆撃、とても分かりやすいだろう? さて、魔法式はこうだ。


魔法属性=火

形状=球

性質=爆発

発動数=100

威力=900

魔力=100000

速度=100

誘導=0


 空に100の巨大な火炎球が発現した。一つ一つが人一人を包み込んで余る程の巨大さだ。我ながらやりすぎな感は大いに感じている。なんてったって魔力消費100000だ。ぴったりなのでこの配分にしたのだが魔力消費やばすぎだろ。母さんでも1発しか打てない消費量だぞ。

 ちなみに広範囲殲滅で誘導は不要だったので0だ。そして威力で大きさが変わるが、魔力制御で変化させれることもわかった。魔力を濃縮すれば大きさは変えずに威力だけ上げられるということだ。


 みんな空に浮かぶ巨大な炎の群れを見て唖然としている。ていうか俺も同じだ。つくったのはいいものの試しに使う場所がなくて使ったのはこれが初めてだ。正直やばい。ねらう先は山の手前の荒野だが正直どうなるか全く分からない。本当に撃っていいのだろうか。


「ル、ルシウス! 待って! 魔法をキャンセルして!」


「え? あ、うん。わかったよ」


 良かった。どれだけの被害が出るかわからなかったから怖かったんだ。山も近いし飛び火したら山火事だ。まぁ水魔法で消せるかもしれないがわざわざそんなことはしたくない。


「かなり過小評価をしていたようです。あなた、ルシウスは既に私を越えています」


 オリジナルの改変魔法以外は初級魔法しか使えないのに!?俺だって王級とかのちゃんとした魔法覚えたいよ? よく分からないけど威力とか範囲で等級が分けられるのかな。確かに魔法陣に等級が書いてるわけじゃないしな。威力とか魔力消費量で分類してるんだろうな。


「ああ。これはもう、あれだな。やばいな。俺たちの子供天才すぎないか? というか天才ってレベルか?」


「魔法陣を読み解いたのが大きいのでしょうね。恐らくルシウス以外まだ誰も読み解けていない。だから何故こんなにも違うのかわからない。そういうことなのでしょうね」


 とりあえず外では力をセーブすることにしよう。これはいかん。特に広範囲殲滅魔法はダメだ。単体や小範囲魔法を主に使うことにしよう。大きさをそんなに変えずに魔力を圧縮すれば見た目はそんなに変わらないからな。結果は変わるが……


「そういえば身体強化は使える? 使ってみてくれるかしら」


「はい」


電光トニトルス=石火エンハンス


使った魔法式はこれだ。


魔法属性=雷

形状=纏

特殊=麻痺

持続魔力=100

強化=500

魔力=50000

速度=500×2


 普通の身体強化は無属性だったが、属性をつけることでメリットがあった。雷なら速度、火なら強化といった具合にだ。そして攻撃魔法とは魔法式やルールが少し変わる。魔力消費は強化+速度(増加前)×持続魔力÷2だ。持続魔力とは継続的に消費する魔力だ。これは強化+速度(増加前)÷10が最低値で大体1秒毎に消費される。今の俺の魔力だと起動の魔力消費も含めると30分も保たないくらいだ。


 俺の体にバチバチと弾ける白雷が纏われた。特殊効果で麻痺を付与しているので触れるだけで麻痺する効果もある。ちなみにこれは属性毎のボーナスなのか魔力消費には影響しなかった。勿論耐性とかで必ず利くわけじゃないと思うが。


 そして白雷の身体強化は速度に大きなボーナスがかかる。なんと二倍だ。ここの数値も変更はできるんだが今のところこれ以上あげるとうまくいかない。魔力制御が難しいんだよ。この状態で駆けると雷光が尾を引いて非常にかっこいい。かなりお気に入りの魔法だ。そして母さんにはこの魔法もかなりの衝撃だったようだ。


「属性付与まで……? しかも雷? 雷魔法なんて聞いたことが……」


「リエル? どうしたんだ。属性がついているとどうなるんだ?」


「……王級魔法ですよ。魔法名は聞いたことがないけれど……」


「ほーう、王級魔法か。へぇ、なるほどなぁ……はぁあ!? 何言ってるんだリエル!?」


 これ王級なんだ。やばいじゃん。ちょっとまってまだ三歳なんだけど。確かにちょっと魔法改変が楽しすぎてやり過ぎた感はもうすごい感じてるけど。


「魔術学園入学までまだ七年近くありますが、ルシウスには力をセーブしてもらったほうがよいかもしれません。」


 本当の力を隠している設定か。悪くないな。まぁ設定じゃなくて本当に隠すことになるんだけどな。


「隠すって可能なのか? 入学時点で魔力測定とか色々あるんだろ?」


「ええ、それは問題ないでしょう。あれはルシウスの使った鑑定アプレーザル程の精度はありません。魔力量によって白、緑、青、赤、黒と五段階で反応する測定器を使うだけです。私の魔力でも最上位の黒ですからルシウスも当然黒でしょう。目立たないことは不可能でしょうが、黒の中でも飛び抜けた魔力を持っていることは分からないでしょう。ただ……」


「なんだ? 何かあるのか?」


「あそこの学園長を誤魔化すのは難しいかもしれません。あのエルフは数百年を魔法に費やした魔法の第一任者。ルシウスが魔力を使わずとも、内に秘める魔力を見破る可能性が高い。まぁ学園長とは知らない仲ではありません。事前に学園長にだけは事情を説明しておきましょう。そうすればルシウスの力を絶対に隠し続ける必要もありません。今はまだルシウスは小さい。力で負けなかったとしてもいつの間にかどこかの貴族陣営に取り込まれてしまうかもしれないことが怖いのですが、それも学園長がこちら側についてくれるのならそういったこともなんとかしてくれるでしょう」


 学園長と知り合いなのか。しかも数百年魔法に費やしたってマジでやばそう。てかエルフって言った?あの美しい種族エルフのこと?これは俄然楽しみになってきたぞ。ていうか力は隠すのか隠さなくてもいいのかどっちなんだよ。


「そうか。リエルがそう言うならそれがいいんだろうな。それじゃあ頼めるか?」


「はい。お任せくださいな」


 それにしても我が家の大黒柱は頼りないな。まぁでも男ってそんなもんなのかもしれないな。あんまり深く考えない脳天気が多いのが男だ。そしてその脳天気さをいつの世も女に怒られるのだ。勿論怒らない女神も中にはいるかもしれないがきっと腹の中は違うに違いない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る