地球に取り残された月の民・ウサギ三姉妹の逆襲~ロボチートで【不幸】の呪いをはねのける~

@mikamikamika

第1話

 月にはうさぎがいて、餅をついている、と言われ始めたのはいつの頃だっただろうか。日本から見える月の模様が、餅をついているうさぎにそっくりだから、そのような噂が流れたのだろう。しかし当時、日本に住んでいた我々は震撼した。なぜ人間たちが、その事実に気付いたのだろうか、と。


 そう、月にうさぎは実際にいるのである。


 月にうさぎが住みついた経緯には諸説ある。私たちが最も信憑性が高いと考えているのは『サキムニ』の子孫であるという説だ。


 かつて、サキムニといううさぎが地球に住んでいた。そのサキムニの前に現われた飢えた男に対し、サキムニは自らが食料となった。それを見て感動した男は、サキムニのDNAを採取して、月の地下空間にクローンとして誕生させた。実は男は地球人ではなく宇宙人だった――そんな物語が月に伝わっている。また、これと類似した話が地球にも逸話として伝承されていた。地球に伝わっている逸話では宇宙人ではなく神様らしいが、月と地球双方に伝わっているうえに、私たちは信憑性が高いと考えているのだ。


 ちなみに、月に住んでいるうさぎはただのうさぎではない。二足歩行で、どことなく人間にも似ている。なので地球人から見たら、うさぎというより亜人と言えるかもしれない。


 月の文明は地球と比べて数千、数万年は進んでいる。超科学文明を築いているのだ。


 そんなうさぎ族は集団戦においては敵軍に対して、圧倒的なまでの差をみせつけて、蹂躙することができるだろう。ある意味、無敵であるのだ。


 しかし、それでもうさぎ族は、戦闘に敗北する可能性も持っている。


 まず、うさぎ族は肉体的には非力な種族である。握力は成体でも15キロほどだろう。また種族としての性格は『相手を信じやすく、騙されやすい』というものだ。つまり、うさぎ族とはチョロい種族でもある。仮に、侵略の野望を隠して、友好を唱えながらやってきた相手であれば、それほど疑ったりせずに星の中に招き入れるかもしれない。難民だと言われたら、同情して、どーぞどーぞと積極的に招き入れるだろう。そして、内部から崩壊させられかねない。


 うさぎ族は圧倒的な戦力を保持しながらも、自分達の性格が、争いごとに向いていないことを自覚している。ゆえに、月の内部にひっそり隠れて暮らしている。そして、他種族との関わり合いも禁じている。


 『騙されやすい性格だから、最初から関わらないようにするのが良策だ』。これが種族の認識である。しかし、あるウサギ族の家族は、自分たちの祖先である『サキムニ』がいたとされる地球に憧れ持ってしまった。そして、ある時、地質調査と称して、地球に観光に向かった。


 うさぎ族は宇宙船を保持していない。宇宙船なんて使う必要がないからだ。移動のための道具に『便利機能付き・瞬間移動装置』というものがある。この道具はうさぎ族の世界では家電のようなもので、一家に一台は保有している、特に珍しい道具ではない。これを使って、うさぎ族の家族は地球に『観光』に訪れた。


 そこで悲劇が起きた。


 ウサギ族の家族は人間の汚い罠にかけられ、地球から出られなくなるという呪いをかけられた。


 うさぎ族は不老不死の種族でもある。しかし、観光にやってきた家族は一匹、また一匹と数を減らしていった。そして、最後に残ったのは3匹の姉妹のみとなった。


 長女のうさぴょん。侍女のバニー。三女のキャロット。


 これは私たち3姉妹が、人間によってかけられた『呪い』に抗いながらも、故郷の星である『オツキサマ』に戻ろうと奮闘する物語である。

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