第30話 猫又─ネコマタ─

ある日見つけた小さな子猫。

母猫に捨てられたのだろうか。

すぐに病院に連れて行き、どうすればいいかを仔細聞いてきた。



ティッシュを濡らして、排泄を手伝い。

体温が下がらないように、毛布で包み。

栄養のあるミルクを与え。

目ヤニを小まめにとってあげて。

最初は怖がって、僕の姿を見ると机の下や、タンスの隙間に逃げ隠れていた子猫。



でも、歳月を経るうちに、すごい甘えん坊になって。

僕の行く所、お風呂以外はついてくるくらいに。

でも。



猫の寿命は長くても20年。

今は実家にいる猫だが、もう11歳になる。


祖父曰く。

奴らは恩知らずなんて呼ばれちゃいるが、そうじゃねえ。

奴らはな、人間を守るために戦っているのさ。

死ぬ間際までな。



そんなある日、歩道で信号待ちをしていると、誰かに突き飛ばされた。

転がって起き上がって、僕が元いた場所を見ると。



車が突っ込んできた。

何が起こったかわからないまま、取り敢えず病院に運ばれて、事情を説明された。



なんでも、老齢の方が運転する暴走車が、横断歩道に突っ込んだらしい。

僕は、誰かに突き飛ばされて事なきを得たが、数名の方が大怪我をし、2名が亡くなったらしい。



そして、実家から電話が掛かってきた。

飼っていた猫が、死んだ、と。

車通りも少ないようなど田舎なのに、車に轢かれたような死に方をしていたらしい。



その時、僕は直感で理解した。

守護られたのだと。

それから僕は泣き明かした。



そして、退院した日の帰り際に子猫を拾った。

これは、運命なのだ。



助けた猫に命を助けられ、また新しい子猫を助ける。

この命は、僕が前猫に預けられたのだ。

救われた僕の命を掛けて、この子を守り、育てると誓った。

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