第29話 アマビエとアマビコ

昨今の流行った不吉な予言と回避方法を教えてくれるという怪異。

僕の大学でも、SNSで見つけたアマビエの画像を友人に見せていた。

アマビエは、自身の姿を描いた絵を沢山の人に見せよ、と言うらしい。

そう言うことに詳しいオカ研は珍しく注目の的になっていた。


祖父曰く。

奴らは絵を描き人に見せろとは言うが、そうしたところで難を受けなくて済むとは言ってない。

アマビコの方は自分の姿を見た人は無病息災でいられると言う。(注:諸説あります)

どちらがただしのか、わしにも分からん。

だが一つ、気になることがある。


祖父が気になっていたこと。

それは神話の話だ。

アマビコの方は「天日子尊(あまひこのみこと)」と名乗ることもあったそうだ。

尊の尊号を持つため、天つ神ではないかという説もある。

対してアマビエは海からきたり、山童と類似していたり、人魚と混同されたりと一貫性がない。


『ここからは僕と祖父の持論になる』

アマビは「豊作はあるが疫病もある『私の姿を書き写し、村人に見せよ』」と言う。

僕と祖父はもしかしたらアマビエは「アマビエ自身が、豊作や疫病を起こしているのではないか」という仮説を立てた。

自分たちを世に多く知らしめ、呪いを拡散しようとしているのでないか、と。

アマビコは前述した通り、自分たちの存在を広めれば厄を逃れられると言い切っている。


そしてここからが重要な考察だ。

アマビコは尊号を持つ天つ神の可能性がある。

ならば、日本の神話から連なるものではないか、と仮定する。

アマビエを呪いを拡散する怪異。

アマビコがそれを回避させる天つ神。

僕と祖父は「イザナギ」「イザナミ」の話に行き着いた。

黄泉の国に行ったイザナミを一目見たいと黄泉比良坂に行ったイザナギ。しかし、そこで醜くなったイザナミの姿を見てしまう。

逃げ出したイザナギは、黄泉比良坂を千引きの岩で封印する。

そして、怒ったイザナミは「毎日1000人を殺す」呪いをかける。

イザナギはそれに対して「毎日1500人を産まれるようにしよう」と呪いを打ち消したという。

アマビエがイザナミ。

アマビコがイザナギ。

僕と祖父は通じるものを感じてしまったのだ。

そして今、世に出回っているのは「アマビエ」だ。

僕たちはSNSを通じてアマビエの呪いを世界に拡散していることに、なるのかも知れない。

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