第12話 赤いちゃんちゃんこ─アカイチャンチャンコ─
ちゃんちゃんこは昔からある袖なしの服。防寒具のイメージが強いだろう。
そして、還暦のお祝いには赤いちゃんちゃんこと赤い帽子をかぶり、お祝いするのだ。
しかし、同じ名前の妖怪がいる。
いじめを苦に自殺した子が「赤いちゃんちゃんこ着せましょうか?」と訪ねてくる。
もしこの問いに、着たい、着せてみろ、などと答えると、その人は首を切って殺され、その血の色で、赤いちゃんちゃんこを着ているような姿になるという。
様々が学校を渡り歩き、日本中にその恐怖をばらまいてきた。
祖父曰く。
妖怪なんてのは、強い怨念や未練や怒りが元でできるもの。
一人の人間が怪異になることもあるだろう。
しかし、そう簡単になるもんじゃねぇよ。
同じ無念で死んだ人たちの負の感情が絡み合って怪異になるのさ。
僕はその晩夢を見た。
遥か昔に殺された少年。彼は首を切り裂かれ、赤いちゃんちゃんこを着ていたように血塗れになって殺された。
またある女性は家族から虐待を受け、その家の富の発展のため、首を切られて死んだ。
次々と。
次々と殺されていく人たち。
何千年の間に、何百人の数えきれない人たちが殺された。
そしてこの世界に生まれたことすら恨む魂が、凝縮されていく。
死んだままの姿で現実世界に実態を持ち、さらに犠牲者を出しながらまた、人の魂を飲み込んでいく。
一般には自殺した可哀想な霊だと言われている。
だから、霊能者たちはあくまでお経などで浄霊、もしくは成仏させようとしている。
自殺した女の子の霊だけなら、それでいいかもしれないが。
『これ』はどうする?
ここまで大きくなった呪詛吐く赤いちゃんちゃんこは、すでに祟り神だ。
そして僕は見てしまったのだ。
夢の中で、奴の姿を。
そして、聞いてしまったのだ。奴の質問を。
『赤い……ちゃんちゃんこ……着せましょうか?』
僕はまだこの問いに答えていない。
着ないといえば逃してくれるのか?
それとも……。
今夜寝るのが怖い。
今夜夢見るのが怖い。
早く、早く、早く早くはやくはやくハヤクハヤクハヤクハヤクハヤクッ!
朝になれ!
鳥の鳴き声が聞こえる。
朝になったのかと思い、カーテンを開ける。
目の前が真っ赤になる。
『赤い……ちゃんちゃんこ……着せましょうか?』
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