第7話 雨女─アメオンナ─

気が重い。

体がだるい……。


梅雨前だと言うのに、暑い日が続いて辟易してるのは僕だけではないはずだ……。

そろそろ梅雨に入って涼しくなってくれないかなぁ。

そんなことを考えていた矢先、雨でもないのにずぶ濡れの女の人を見つけてしまった。

あれは、やばい。


祖父の曰く。

同じも者だと言っても、機嫌がいい時もあれば、機嫌が悪い時もある。

特に自然相手に干渉できるような奴はきをつけろ。

あいつらの機嫌は梅雨の空模様みたいにころころ変わりやがる。


雨女がいるところには、干ばつの文字はない。

その名の通り、雨と共に在るのだ。

放置してる分には問題はないかもしれない。

もし機嫌の悪い時にあたったら最悪、命はない。

しかし、いつの間にか姿を消していた。

ホッと息をついた瞬間。


が。


後ろから首を掴まれた。

気づかないうちに後ろに回り込まれていたらしい。

「く……あ……っ!」

ギリギリと爪が食い込み、血が滲む。

振り解こうともがくが、雨女の力は異常に強く、ビクともしない。

息ができず、血液も止められた意識が霞掛かる。


意識を手放す瞬間。

苦しくて開けた口から、なにかが飛び出し。

「はぁ、はあ、……」

見れば中にただよう朧な光。

あれは、鬼火か……。

それと同時に、自分の中にあった陰気がなくなっていることに気がついた。

陰火に照らされた雨女を、大きく息を吐き、喉を抑えながら見上げる。

その口元は、笑っているようにみえた。

そして、俺の陰気は陰火となって、雨女とともに消えて行った。


もしかしたら、雨女は機嫌よく僕の陰気を連れて行ってくれたのかも知れない。

もう少し方法は考えて欲しかったが……。

そして、降り出す雨。

その日、この街も梅雨入りしたと後で知った。

あの雨女は梅雨を連れてやってきたのかもしれない。

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