第6話 鎌鼬─カマイタチ─

家でシャワーを浴びてると、足元がヒリヒリと痛むことに気がついた。

ふくらはぎにうっすらと傷がつき、みみず腫のようになっている。

風呂場から出てから、傷薬を塗りしばらくしてから治っていたのですっかり忘れていた。

しかし、大学のあちこちから同じようのな話を同時に聞くことになった。


曰く、ズボンが知らないうちに切れていた。

曰く、血は出ていないが切り傷がある。

曰く、鼬のような動物をみた。

妖怪研究のサークルなんかが調査に乗り出して、校内新聞を作ったり、しばらくは謎の怪現象で持ちきりになった。

─鎌鼬─

こん棒を持ち転ばせる雄と、鎌で切りつける雌。そして傷薬を塗る子供の三匹で群れをなす妖怪だ。


祖父の話曰く。

そんなもの大抵は真空現象で、本物の怪奇現象なんてのはこのご時世まれだ。

動物にしたってハクビシンかなんかの見間違えなんてことは良くある話よ。

そんなものより怖いのは、人間の方だ。


それからしばらく。被害はひどくなる一方だった。

時間帯は夜に代わり、今までは脚だけしかなかった被害が、腕や背中など、見境がなくなってきている。

さらにひどいのは傷だ。

今までは血が出るような被害は聞かなかったが、日に日に傷もひどくなっていき、病院で何針も縫う大ケガをするものまであらわれた。


事ここに至って、ようやく大学側も事の重大さに気がついたらしい。

相変わらずオカルト研究会、オカ研は鎌鼬云々といっていたが、人間犯人説がまことしやかにささやかれ始めていた。

そしてついに、犯人がみつかった。

学部は違うが、同じ大学の学生だった。

なんでも、鎌鼬騒動に乗じて自分の趣味であるナイフコレクションを試してみたくなったとのこと。


しかし、僕は視える性質なんだ。「鎌鼬は本当にいる」

そして、当然のようソレは訪れた。

犯人が警察署内で、惨殺されたのだ。

営利な刃物で切り刻まれて。

僕にはすぐに、やったのは鎌鼬だというのが理解できた。

なんとも後味の悪い終わり方をしたが、それ以来そういった事件は起こっていない。

本当に怖いのは、怪異すら利用する人間なのか、それとも人を死に追いやることができる妖怪なのか。

どちらが本当の化け物なのか、僕にはわからなかった。

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