効果は一時間!さあどうする?
「何? 何かまた問題でも?」
モジャラが聞くと、十時に代わって風魔が答えた。
「そうか、あやかし村から人間界に行くのも一時間位かかるからね。今の季節は雪女の雪子にとって、外を歩くのでさえ危険なことだからなあ……」
「そうそう、家を出る前に塗って、暑さで溶けないように人間に変身しておくって手もあるけど、そうなると海に着く前に効果は切れるし、そもそも
「なるほど……それは確かに難しいね」
「俺たちは雪子が人間になっても『これこれこうだから変身したんだ』って分かってるから良いけど、事情を知らない他の妖怪や地獄が騒ぎ出したら厄介なんだよねー」
「そうそう。そうなると、海遊びどころじゃなくなるね。もしかしたら、皆で地獄に行って申し開きをしないといけなくなるかも」
モジャラは風魔の言葉に、ヒェーッと全身の毛を逆立てた。
「そ、それは嫌だなあ!」
いくら妖怪で、恐ろしいものやおぞましいものを沢山見慣れていると言っても、何か悪い事をしたら罰として連れて行かれ、痛い目に遭わせられるのがその場所なので、モジャラも地獄はあまり好きじゃない……というか、かなり苦手なのである。
「本当にね。僕も、
……風魔も風魔で、モジャラとはまた違う心配をしているようだ。
「困ったねー。でも薬の効果をこれ以上伸ばすことは出来ないから……何か別の方法を探さないと。ウーン、雪子専用の冷凍庫でも作った方が良いのかな……。でもなあ、まだモンスターの方に時間がかかりそうだし……」
「今から作ると間に合わなくなっちゃうかな?」
「ウーン、多分……」
十時は申し訳なさそうに両眉を下げてモジャラを見た。
でもその時だった。風魔が「クーラーボックス」と呟いたのは。
「うんと保冷剤や氷を入れて冷やしたクーラーボックスに雪子を入れて、人間界の海まで運べば良いんじゃないか? 薬は海に着いてから、クーラーボックスの中で塗れば良いんだよ」
「おおっ……!」
「それはっ……!」
十時とモジャラは顔を見合わせ、同時に言った。
「名案だ!!」
しかし、あやかし村には、雪子がしっかり収まるようなBIGサイズのクーラーボックスはない。
そもそも、「クーラーボックス」を使うという概念がないのだ。冷蔵庫や冷凍庫なども、かわうそや雪子のように料理屋でもやっているのでなければ、持っていないのが普通である。
「誰かにそれらしいものを借りてくる? 例えばさ、ドラキュラのホームズさんに言って……」と、モジャラは知り合いの名を挙げた。
ドラキュラのホームズさん、というのも、なかなか個性的で面白い妖怪なのだが、彼の話はここでは割愛させて頂く。
「棺を借りたってしょうがないだろう……。やっぱり、クーラーボックスはきちんとしたところで用意しよう。それが一番だよ」
「えっ、用意するって、どこで?」
「人間界のホームセンターだよ。ドロさんも誘って行こうかな」
僕は人間界が苦手なんだけどね……と、風魔は苦笑いしながら言った。
「そこで十時にお願いがあるんだけど」
「え、なに?」
「その人間に変身できる薬を、貸してもらえないかな。僕とドロさんでテストしてみたいんだ」
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