大盾の精霊姫『暴食の大盾ヘカーテ』
まるで恋焦がれる者に出会ったかのようにカリンを抱きしめる美女に、訳が分からず困惑して呆然と立ち尽くすカリンに、ファナが素早い対応をした。ギルド内にいる冒険者達にわざと聞こえるボリュームで
「まぁ!?カリンさんの親戚の方だったんですね!?それは積もる話もあるでしょう!部屋へと案内しますからこちらにいらしてください!」
と言って、カリンと美女を連れて、ギルドにある応接室の一室に2人を入れ、部屋に防音魔法と鍵をかけた後、2人にソファに座るように促し、2人に出すお茶の準備をし始める。
その間、カリンはとても落ち着かない気分を味わっていた。何故なら、美女はもう離さないと言わないばかりに、カリンの右腕に抱きつくようにソファに座っているのである。しかも、嬉しそうに顔を綻ばせ、右腕に頬をスリスリと擦り寄せている。こんな絶世の美女にこんな対応されては、同じ女性であっても落ち着けるはずかない。
「あの……貴方は一体……?」
「お待たせしました。粗茶ですけどどうぞ」
カリンが美女の正体を尋ねようとした時、ファナは煎れたお茶を2人の前に置いた。それを見てようやく美女はカリンから離れ「ありがとうございます」と言ってお茶をすする。その姿も気品溢れる美しさを感じ、改めて美女の美しさにカリンはまた呆然としてしまう。
「それで、率直に伺いますが……貴方は武具の精霊ですね?」
「ぶふっ!?武具の精霊!!?」
一旦心を落ち着ける為、お茶を飲もうとしたカリンが、対面に座るファナからとんでもない発言が飛び出して、思わず飲んだお茶を吹き出してしまった。
武具の精霊。実は、冒険者の職業選びの際、武具の精霊達がその冒険者を見て、その冒険者に見合う冒険者の職業を選定している。カリンもだが、大半の冒険者は武具の精霊達の世話になっているが、実際に武具の精霊を見た者はいない。一つだけ武具の精霊が冒険者の前に姿を現す事があるが、それが意味する事はまた非常に特殊な事例である。
「あら?よく分かりましたね。他のギルド職員は気づいていないようでしたけど?」
「まぁ、私これでもギルド経験はそれなりにありますから」
美女の言葉にそう返すファナに、カリンはそう言えばファナの年齢は不明だった事を思い出す。ただ、自分よりも2回りも年齢が違う冒険者が
「ファナの奴は俺が冒険者登録した当時もあの姿だったぜ」
と、発言していたのをカリンは思い出した。という事は、未だに対面する美女とはれるほど美しい容姿をしているファナだが、その実年齢は……
「カリンさぁ〜ん。今は余計な事考えている暇がおありですか?」
ファナが黒い笑顔でカリンの方を向いたので、カリンは「ひいぃ!?」と叫び声を上げてしまう。
「ダメですよ。ご主人様。女性の年齢を探るのはご法度ですよ」
カリンの隣に座る美女が優しく微笑み注意する。その微笑みを浮かべる美女に、カリンはふとある疑念が浮かぶ。彼女の正体が本当に武具の精霊だと言うなら、精霊は下手したら自分達よりも何百年と生きている訳で、物凄い絶世の美女だけどその実年齢は……
「ご主人様」
「ひいぃ!?ごめんなさい!?ごめんなさい!!?もう何も考えたりしません!!?」
隣からファナよりも強烈な黒い微笑みを受け、カリンは土下座してひたすら謝った。カリンがひたすら謝罪して、カリン自身がようやく落ち着いた頃に、カリンはゆっくり頭を上げて目の前の美女を見る。
「あの……それで……本当に貴方は武具の精霊なんでしょうか……?」
ほとんど土下座に近い体勢で尋ねるカリンに、美女はそれはもう誰をも魅了する美しい笑みを浮かべ
「はい。ご主人様。より正確に言うなら私は大盾の
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます