第三百九十九話 マーディン
新機歴121年12月8日午前17時23分
グランシャイナー及び同盟軍一同、マーディン着。
街の外に展開された防衛拠点付近にグランシャイナーが着陸すると、5機の機兵達が直ぐにやってきた。
真紅に染まったエードラム。トリバ防衛軍第七部隊隊長、リオ・ライマー専用機『エードラム弐式改 RION』を先頭にエードラム弐式が4機という構成であった。
ううむ。マシューやミシェルから話だけは聞いていたが……すごくかっこいいな……。専用カラーに塗られた隊長機の時点でもう素晴らしいのに、通常のエードラムが7mなのに対してRIONは全長9m。通常のシャインカイザーとほぼ同じサイズにマッシュアップされたその巨体はパワー型で、動力となる魔力量はかなり重く、それを解決するため複座型となったという。
いわゆる、帝国の機体と同じ思想であり、後のシュトラールに?がる重要な機体というわけなのだが……プロトタイプとかもう、ロマンの塊だよ。
グランシャイナーから降り、出迎えてくれたリオ・ライマー達に声を掛ける。
「出迎え感謝する。私は同盟軍総司令官カイザーだ。君達の話はレイ……大統領から聞いている。本来の任務も有るだろうに、協力感謝する」
「我が国の事なのだ、これも任務の内さ。君が頭を下げることではないよ。なあに、近くでトカゲを追い回していた所にこの騒動だ。駆けつけないわけがなかろう。
それにだ。貴方の大切な仲間であるマシューやミシェル、シグレを無理に借りて戦った礼もしたかったんだ。どうか頭を上げてくれたまえ」
「ああ、例のワニの件だな。パイルバンカーの話は聞いたぞ! あれは素晴らしい装備だな、こんな時でなければもっとじっくり話したいのだが……」
『なに!? 今パイルバンカーと言ったのかね! カイザー、それにリオ・ライマー殿。後ほど詳しく話を伺いたいのだが……どうだろうか』
「カイザーとリオの口調が似ていると前に話したけどよ、それにキリンまで混じると非常にややこしいな」
「尊大な口調の方が3人も集うとなかなかですわね……」
「こう、ぐったりとするでござる」
くっ……リオとキリンが似ているのはともかくとして、それに俺を入れるなよな……。
俺はそこまで偉そうな喋り方をしていないだろう!
リオを護る様に立つ第七部隊の中には懐かしい顔、リム族のマルリッタの顔もあった。ハッチを開け、嬉しげな顔でマシューに手を振っていたが、エードラム弐式に乗る姿は様になっていて、歴戦の戦士にしか見えない。
酒場の強烈なお姉さんが今では特殊部隊のエースか……。酔っぱらいの代わりに魔獣を殴るようになるとは、素質がある人というのは何処に眠っているかわからないもんだよなあ。
新機歴121年12月8日18時21分
指揮下の同盟軍兵士達への指示を終えた私は『ルゥ』に身を移し、ブレイブシャインのパイロット達と
「やあ、待っていたよ……っと、聞いてはいたが驚くな。その姿もカイザー殿なのだったな。そしてそちらの方がスミレ殿か。マシュー達からスミレ殿の知慧の凄さはよく聞いていたよ。頼りにさせて貰う」
「それはどうも。マシュー達が何を言ったのかは存じませんが、私は頼るに値しますので存分にご期待ください」
「おお、スミレ殿は正しく噂通りだな! うむうむ、期待させて貰うよ!」
スミレェ……。
いやまあ……元々戦略サポートAIという役割を持って居て、結構な能力を持っている上、今ではポーラとのデータリンクも可能となっているからね。確かにスミレ先生は軍師としてこれ以上にないほど凶悪な存在だと思う。頼るに値するというか、スミレに頼れば作戦成功率はかなり上昇するだろうね。
……けどさあ、先生には少しでも良いから謙遜するということを覚えてほしいよね。なんだか一緒に居る私が恥ずかしくなってくるよ……。
「さて。先程入った情報によれば、現在ルクルゥシア軍は当拠点より機兵の脚で3時間の位置にて休息をとっているようだ。事前に敵がどの様な存在なのかを聞いていたからね、お伽噺のアンデッドのように、不眠不休で行軍するのではないかと考えていたのだが、自我が欠損している兵たちとは言え、流石に中身が普通の人間では、わずかでも休まさせねば動けなくなってしまうようだな」
ルクルゥシアに洗脳され、自我を奪われた者は、ただひたすらに命令を執行するゾンビ兵となるはずである。一度、作中で眷属化された人々が、不眠不休で三日間もの間ぶっつづけの作業をし、山間部に砦を築いたことがあった。勿論、その反動で眷属化された人々は命を落とすことになったんだ。
平成時代の子供向けロボットアニメでは珍しく、民間人の犠牲者が出たことと、それによってクレームでも入ったのか、制作会社がスポンサーから怒られたからよく覚えているのだ。
なのでこの報告には少々首を傾げるのだが……もしかすれば神の手により何らかの影響を受けているのかも知れない。リアルのほうがアニメより易しめに補正が掛かってるというのも妙な話だ……いや、劇場版がベースになっているということは、その辺りも考慮されている可能性があるな。流石に劇場版でまた怒られる様な真似はしないだろうしな。
まあ、なんにせよ帝国のパイロット達が過労死させられないというのは良い報告だ。思ったよりも多くの人を正気に戻せるかも知れないぞ。
「ありがとう、リオ。さて……スミレ、君ならどう動く?」
ここは司令官である私が軍師であるスミレかっこよく振って作戦を話させるべきシーンだろう! そう思ってスミレに話を振ったんだけど……。
「まったくカイザーは直ぐ私に頼るからだめですね。まあ、カイザーの戦略を聞いたところで結局は私が手直しした作戦で動くことになるわけですから、無駄を省いたという点は評価してあげましょう」
これだもん。全くスミレ先生は手厳しいね。
「では、作戦の説明を始めます」
スミレ先生はふわりと飛翔し、天幕の壁に映像を投影した。
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