第三百八十七話 忍び寄る危機
スミレとフィアールカ、そして私の3人……人? いや、三機でグレンシャ村を散歩している。
地表に降り立った翌日。予定通り我々ブレイブシャインは休暇をとることになったんだけど、予定よりちょっぴり長い、一週間の滞在が決まったのだ。
今後の予定として、グランシャイナーに乗って
当初の予定では、一度基地にてグランシャイナーのお披露目をした後、クルー達の用意が出来次第ゆっくりとお迎えにくるという手はずだったんだけど、言われて見ればなるほど二度手間になるもんね。
だったらクルー達の紹介も兼ねて一緒にお披露目をした方が良いよね。ってなわけで、クルー達の用意としてはちょっと短く、我々の休暇としてはちょっぴり長い1週間の時間が用意されたわけです。
まあ、1週間の休暇を『長い』って言っちゃうのはアレだけどさ、状況が状況だから仕方ないんだよ。ほんとは私だって2ヶ月くらい休暇を取ってさ、皆と戦いなんて関係ないノンビリとした旅をしたいなって思ってるけど、それはまあ、色々終わってからのお楽しみ。『私用に使うななの!』なんてフィアールカから怒られそうだけど、グランシャイナーに乗ってこの大陸の人達がまだ見ぬ新大陸に向かうのも悪くないかなって思ってる。
ま、長い旅になると思うし、レニー達がついてくるかどうかはわからないけどね。
そんなわけで、3
「しかし神様? も凄いことするの。私達ポーラやカイザー達はまだロボだから良いけど、人間であるクルー達までまとめて異世界転移させちゃうなんて中々にエグいの」
まあわかる。架空の人達とは言え、住み慣れた土地から連れてこられた事には変わりは無い。というか、気になって仕方が無いのがクルー達の記憶だな。一人一人に凝った設定があるはずもなく、言い方は悪いけど、彼らは一山いくらみたいなモブたちなわけだから、日本に居たときの家族構成や人間関係、それぞれの趣味や嗜好っていうものが設定されているとは思えない。
今となってはそのクルー達も世代が変わって、グレンシャ村で生まれ育ったこの世界の人間になってしまっているのだから確認のしようが無いわけだけれども、考えれば考えるだけ頭が痛くなるからもう考えるのは辞めよう……。
そんなわけで、フィアールカの話題には無難に『そうだね』と答えておき、さらりと流してしまうことにした。
さて、他のメンバーは何をしているかと言えば、パイロット達はヴァイオレット一家の案内で同じく市場まで観光に行っている。それに私達が同行しなかったのは別に深い理由は無い。皆がそれぞれ好きなように行動をする事になっていたのだけれども、適当に村をぶらつこうと思った私達と、村の市場で名物を食べ回りたいというパイロット達で綺麗に分かれただけなのでした。
それにレニーの両親が乗っかる形になり、綺麗にグループ分けがされてしまったと言うだけ。まあ、私達もそのうち市場に回る予定だから、きっと何処かで合流することでしょう。
ちなみにキリンは1機でなにやらする事があるらしく、ハンガーでノンビリしている他の機体達ともまた別行動だ。今頃グランシャイナーに乗り込んで何か悪いことを企んでいるはずさ。どうせまたビックリドッキリ的なメカを開発していることだろう。
しかし、もう大分寒い時期だというのに、この村はポカポカとして暖かいな。地形的なものあるのかもしれないけれど……いや、そういえば神様の加護で住みやすくなってるとか言ってたっけ……まったく色々とやらかしてるよなあ、あの神様は。
しかしそれはそれとしても、この気候はありがたいね。暖かな陽射しの下、ポテポテと歩くフィアールカに寄り添うようにスミレと飛んでいると……ある意味最強の難敵とエンカウントしてしまった。
「わあーー!! めがみの妖精しゃんだああああああ!!」
「お祭りで飛んでた妖精さんだああああ!!」
「クマさんもいるのです! うわああああ!!!」
「……第一種戦闘態勢。スミレ、フォーメーションAだ」
「フォーメーションA承認。フィアールカ、貴方のことは忘れません」
「え? え? 一体何なの? フォーメーションAってなんなの!?」
スミレと二人でフィアールカの後ろに回り、せーので子供達の方に押す。私達の力は大して強くは無いけれど、二人なら、そしてぬいぐるみに等しい体重のフィアールカが相手であればその動きに干渉することは可能である。
我々から与えられた運動エネルギーを背に受け、グイッと前方に押し出されたフィアールカは無敵である。空気を切り裂き、目的へ向かってダイブする。
「ちょ、ちょっと! なにをするの! いきなりなんなのおおおおお!」
「「「わああああ! くまさん! おしゃべりするくまさんだああああ!」」」
「にょわあああああああ!!!」
あっという間に拘束され、もみくちゃにされてしまうフィアールカ。良くやってくれた……フィアールカ! 君の犠牲は忘れないぞ!
「わあ! 可愛い妖精さんつかまえたの!」
げ、げえ!新手が! くっダメだ、動けない! こうなれば頼れるのはスミレだけ――
「す、スミ……レ…………お前も……かぁ……」
「すいません、カイザー……。私としたことが……反応はおろか気配を察する事も出来ず……グレンシャ村の住人……恐ろしい存在です……」
助けを求めようとスミレを振り返ると彼女もまた、別の子供に捕らえられていた……。
これはまいったな、ここ最近で一番の危機が訪れたのでは無かろうか……。
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