第三十二話 紫色のパイロット  

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 種族:人間族(犬系獣人)

 年齢:推定12歳

 性別:女

 身長:132㎝

 体重:未計測

 特徴:髪色は赤、目の色は橙、やや褐色の肌色に年相応の慎ましいプロポーション

 武装:無し


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 ずらずらっとデータが出てくるが、うん、みたまんまだね……。レニーの時と違って人道的なテキストが並んでいる。そうかファンタジーな異世界だけあってケモ耳少女なんて素敵な種族が存在するんだな……。


 って、それもそうだが、問題はそうじゃない。パイロットが女の子だ? いやまあレニーも女の子だが、盗賊の砦だぞ? 何をどう間違えたら女の子が……。


『カイザー、パイロットが投降しています。詳しい話はパイロットから聞きましょう』


「そ、それもそうだな、よし、レニー頼む。何かあったら俺が援護するが油断するな」


「はい! カイザーさん! でもまあ、きっと大丈夫ですよ。見たところ可愛い女の子ですし、きっと何か事情があるのでしょう」


 油断するなと言っているのにヘラりと笑うとハッチを開けコクピットから飛び降りていた。


「ごめんねー、一応縛らせて貰うよ-」


 手慣れた感じでレニーが拘束している。素材採取で培った技術だと思いたい。縛られているパイロットはじっとレニーを見ているが、声も出さずに静かにしている。


 縛り終わったのかパイロットの向かいに座り、尋問らしくない尋問が始まる。


「痛かったら言ってね? さあ、大人しくしてたら悪いようにはしないから。ええと、まず攫った女の子――」


「お前ら一体何が目当てでこんな所まで押し入ってきたんだ?」


 今まで沈黙していた紫のパイロットが突然かぶせてきた。口を開いても平気と判断したのだろうか。かぶせられたレニーは行き場を失った口であうあうと言っている。


「賊か? だったら残念だったな! ここにはお前らが欲しがるような物はなんも無いぞ!」

「え、ちょ、何を言ってるの? 盗賊団はあなたたちじゃ無いの!」

「はあ? 一体何言ってんだ?」

「とぼけないで! 攫った商人の女の子を返すのです!」

「待って待ってあーーーもう!! ちょっと待て! マジ待って! ええと情報を整理するぞ!!!」


 あれあれあれ……待ってくれよ。なんだかこれは……とってもやらかした感があるぞ……?

 レニーに通信を送り、きちんとこちらの事情を話した上で相手の話を聞くよう指示を出した。


 こちらから一通りの事情を聞き終わった女の子は深く深くため息をつくと……。


「ぶぁ~~~か!!」


 と、一言返した。


「なっ!」


「ばかだよあんた! 騙されたんだよ! 盗賊団? 失礼な! ここはトレジャーハンターギルド、赤き尻尾の大戦の原野グレートフィールド駐屯地だ!」


「ええっ!? しょ、しょんなあ……? じゃ、じゃあ盗賊団は別の場所に?」


 それを聞いた女の子はまた深く深くため息をつくと、哀れむような目でレニーに伝える。


「はあ…あのねえ、この辺に盗賊なんて出ないの。イザークからフォレムに向かうキャラバンには必ず腕利きハンターがつくんだぞ? 盗賊なんて群がる訳が無いじゃないか。

 てか、あんたハンターだろ? 盗賊団が現れた――なんて噂が立った時点でギルドに討伐依頼が貼られるはずだろうが」


「と、盗賊の討伐依頼なんて4級以上じゃ無いと受けられないじゃない! 残念だったね! 私はまだ5級なんだからそんあの知るわけ無いんだよ!」


「……それは威張って言うことじゃないだろう? てかその腕があって5級っておかしくない? あたいだって3級だぞ?」


「ほ! 本当はもう4級になってたとこだったの! ようやく機兵を手に入れたから昇格クエスト受けて……って、そうじゃない、そうじゃないよう! あの、あの!」


「何だよ!? まだ聞きたいことがあるのか?」


「ごめんなさい……。あなたもだけど、仲間の機兵も壊しちゃって……勘違いとは言え取り返しのつかないことを……」


 そうだった。俺もなんだかノリノリで指示を出していたが、仕組まれたとは言え立派な誤爆だ。謝って済むことでは無かろうが、ここは全力で謝っておこう。


「俺からも謝らせてくれ、本当に申し訳ない!」


『ちょ、ちょっとカイザー?』


 あ、しまったあ……俺が話しかけられるのは信頼できる人にだけって決めてたんだった……。しかし、時既に遅し。少女がキョロキョロとしている。ええい、誤魔化せないなら巻き込んでしまえ。


「お、おい!お前の機兵、二人乗りなのか?男の声がしたんだが」


「え、えーと……その……」


「いや、俺はカイザー、お前達が機兵と喚ぶ存在そのものだ。今回は本当にすまなかった!」


「キュウ……」


「『あっ』」

 

……


 怒られた、めっちゃ怒られた。レニーとスミレからめちゃくちゃ怒られた。いきなり喋ったら普通はびっくりするだろうと。

『そりゃそうだよね、リックやレニーみたいな心臓に毛が生えた様な奴は中々いないもんな』そう言ったら『乙女と老人を一緒にするな』とさらに怒られた。


 ぎゃあぎゃあと言葉の応戦をする声がうるさかったのか、少女は思ったより早く目を覚ます。


「……悪い夢を見た……」


「少女よ、すまなかった。俺は別に驚かすつもりは……」


「ギエーーー」


 気絶こそしなかったが、またびっくりされてしまった……

 ……が、話せる範囲で事情を話し漸く理解して貰えた。


 なんだかまだちょっとビクビクしてるが、誤差だ誤差。


「……で、あんたがカイザーで、一緒に乗ってる? 住んでる? 良く分からんが一緒に居るのがスミレさんってことね」


「あたしはレニー・ヴァイオレット、5級ハンターよ。よろしくね」


「ああ、あたいはマシュー。ただのマシューだ。こいつ、この機兵の名前はわかんねえ。前の頭領が拾ったんだが、ぶっ壊れてるってこの山に捨ててたらしいんだ」


「壊れてるから捨てた? じゃあ直したのか?」


「いや、ここに駐屯地作ってるときガラクタ置き場から出てきてさ、邪魔だからぶっ壊そうと思ってぶったたいたんだよ。そしたらなんとショックで直ってやんの。コクピット無事だったし、これ幸いと使ってたのさ」


 ぶったたいたらって……。もしかしたらこの世界ではそれもまた有効な修理方法なのかも……いやいや……ないわ…。パイロットが分からないっていうのであれば調べるしか無いな。元よりそのつもりだったが。


「マシュー、迷惑をかけた上こんな事を言うのはアレなんだが、この機体を調べさせてくれないか? 分解なんかはしないし、終わったらちゃんと何かお礼をする。頼む」


「別に良いよ、元々ぶっ壊れてたんだ。あたいがだましだまし乗ってるくらいで誰も乗らないし、分かることがあったらあたいも知りたいくらいさ」


 マシューの許可が出たのでスミレにディープスキャンをお願いする。通常のスキャンとは違いあからさまなエフェクトがかかる仕様なので、こっそりやるわけには行かなかったんだ。こういう所まで原作に忠実なのは頭が下がるが悩ましい。


『ディープスキャン開始……やはりこれは魔獣由来では無くキチンとロボットとして作られた機体のようです……動力炉が通常のエー手リンを使用する物とはとは違……んんっ? こ、これはまさか……背部サーチ……ええ……そ、そんな……嘘でしょう……?』


「おいおい、情報共有してくれないと俺には分からないだろ。早く見せてくれ」

『は、はい……で、ですがこれは……』

 

「おいおい待ってくれ……冗談だろ……」


 スミレから伝えられたデータを確認すると……紫色の機体には俺と互換性があるコネクタが存在していた。 

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