第84話 デート先は・・・気のせい気のせい

「坂本さん、妹尾先生お世話になりました。

坂本さん、あの話はまた後日で♪」


そういって美名城は保健室を後にした。


坂本さんは太郎を見て

「あんたもモタモタしてないで早く行きなさい!!」



「あ、はい、失礼しました!」


太郎が慌てて保健室を後にする様子を

微笑ましそうに眺める妹尾先生と坂本さん。


まさか、

美名城先輩からデートの誘いを受けるなんて!!

太郎は気持ち高ぶりながら靴を履いて、校門前に向かった。


まだ美名城は来ていない。


こういう場合は

俺がデート先の目星をいくつか考えておくべきなのかな・・・

いやいやいや、待て待て、

まだデートと決まったわけじゃない。


このシチュエーションは

デートを連想させるが、相手は美名城先輩だ。

体育祭でいくら仲良くなったとは言え

俺なんかでは相手は務まるはずがない。

でも一応・・・

念のため・・・・

目星を考えておいた方が・・・・



「タロちゃん、お待たせ♪」


「あ、お待ちかね・・・

あ、いや、どうもです」


「じゃあ、出発♪」


太郎の自転車のリアキャリアに乗った。


「えー、こちらは

安全運転がモットーの太郎交通です♪

ちなみにどちらに行かれますか?」


「えーと、ひたすら海沿いを道なりで♪」


海沿いを道なりって一体どこに行くんだ~~??



「待てよ

こ、このルートは、まさか・・・」


そのまさかであった。


着いたのは

美名城の兄が経営する


「海満をのんびりと眺めながら、

ここいらでホッと一息お茶でもいかがかな♡

略して海満カフェ」だった。


そしてなぜかお店の前に並んでいる多くの自転車。


どこか見覚えがある自転車だな~

いやいや、気のせい気のせい・・・


店内に入ると


見覚えのある顔ぶれが多数。


どこか見覚えのある顔だな~

いやいや、気のせい気のせい・・・


「えーと、

孝也に似た人に

駿に菊池さんに八千草さんに似た人って

いつメンやないかーー!!!」


分かってはいたけど、

分かってはいたけど、

いざ現実となるとひどく切ないものだ。


「あれ、君は確か・・・」


背後から声をかけられる。


振り返ると、

そこには高坂と八千草姉(美悠)がいた。


「あれ?高坂さんとお姉さん!!」


太郎のリアクションに

「いやいや、

美悠さんはあなたのお姉さんじゃないから

気軽にお姉さんだなんて失礼よ!」

と高坂がツッコミを入れる。


「あ、すみません」


「いいのいいの。

実のお姉さんだと思って接してね。」


美悠の笑顔に

太郎はすっかり包み込まれていた。


そんな太郎を見て

高坂は睨みを利かせる。


太郎は高坂の視線に

背筋が凍る思いでいた。



美名城先輩との二人きりデートだと思って来てたら

めちゃくちゃいるやないかーーい!!


V時回復した太郎のメンタルは

また下降の一途を辿ろうとしていた。

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