第63話 200mを制した男

「しっかし、三大美女に偽りなしだね。うらやましい!!」

菊池が八千草美悠の美しさにあっけにとられていると

孝也が

「いや、菊池殿も可愛いでござるよ」


「何、その後付感!!」


「いやいや、誠で候!!」



「そういえば、みんなこそ何でここに?」

太郎がおもむろに尋ねると


八千草が

「タロちゃんを迎えにきたの。

みんなでこの体育祭を楽しみたいなって!」


孝也も

「そうだぞ、迎えにきてやったのだ。

それにずるいぞタロ氏。お主だけ抜け駆けして

その、高坂先輩とこそこそとお近づきになりおって。」



太郎は

「そうだな、日差しの中はあまり得意ではないけど・・・」


と言って、太郎たちは青組のスタンドへと戻っていった。




「続いて200m走です。

果たして200mで一番速い者は誰でしょう!?」

放送を続ける高坂の中で太郎がいなくなっただけなのに、

なぜか大勢の人がいなくなってしまったような

寂しさのような感情が残っていた。



「200m走最終組第一位は

赤組、柊木 翔です!!」


200m最終組を制した

この柊木 翔は駿と同じ一年生

部活はサッカー部に所属し、

レギュラー争いをするスーパールーキーである。

そしてこの体育祭にて

同じ赤組の高坂に

MVPをとったらということを条件に告白した

怖いもの知らずの男でもある(後ろ姿イケメン)。



いや、その括弧付きの後ろ姿イケメンは余計だろう!!



柊木翔は

すぐさま放送席にいる高坂の元へと向かい

「約束忘れないでくださいね」

と伝えた。

高坂は翔の言葉に頷いてはいるが、

心ここにあらず。

それは翔自身にとっては

避けられていることと同等の感触だった。



青組のスタンドに戻った太郎は

日陰にてすっかりエネルギーを補給し、

なぜか周囲の盛り上がりにすっかり溶け込んでいた。


「どうした駿?

もっと全力で応援しようぜ!?」


「え、あ、うん!」


「その調子だぞ、タロ氏。

応援で後押しするのだ!!」


「おい、孝也、

腕の振りが遅れてるぞ!」


「お、おう!!」



菊池が

「どうしちゃったのタロちゃん?

すっかり元気になっちゃって♪」


八千草も

「ほんとだね、面白い!!」


青組スタンドに活気が出ていた。




「高坂先輩、

どうして俺を避けるんですか?」


「どうしてだろう?」


「とぼけないでください。

俺は本気です。本気だからこそ

今日あの場で、恥かくことを覚悟で告白しました。」


「うん、翔くんの気持ちは分かってる。

分かってるんだけど・・・」


「はっきりと答えてください。

このまま俺はMVPをとるつもりです。

そしたらちゃんと俺と」


柊木が高坂に答えを迫ろうとすると

「ごめん、その件はもう少し考えさせて!

翔くんの気持ちはすごく嬉しいから、

もう少し・・・ね」

手を合わしてお願いされた翔は

「は、はい。」

と一言返事をすることしかできなかった。


そして高坂はある一点を見つめていた。

それは赤組、ではなく

青組のスタンド


細かくは青組スタンドで

意気揚々と応援する太郎を見ていた。


柊木は高坂の視線を追った。

するとそこには

太郎の近くにいる

駿がいた。


彼は、確か100mで一位を獲った・・・・

まさか、高坂先輩は

彼と俺で迷っている・・・・

そういうことなのか!?



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