第11話 ハートが射貫かれまくった将軍の返答

「崎坂くんってすごいんだ。私、何にも知らなかったなぁ。

佐藤くんは置いといて、あの若草くんを従えさせるくらいだもんね。」



置いといてって、俺の扱いゴミ並だな。



「平民の太郎は置いといて、

侍の駿には俺も結構世話になってるからな。」


「へぇ~、

やっぱ将軍と侍の距離感って近いものあるんだね。

あまり、若草くんと話してるところ見かけなかったから知らなかった。」


俺の扱いはもう慣れたからいいとして、

「お前そんなに孝也と親しかったっけ?」


「いや~、親しさで言えばタロちゃんの方が上だと思うんだけど」


「だよな、あいつはそういうやつだからな」


八千草さんが見かけてないのも無理はない。


「そういえば、何故儂なんかに話しかけたんだ?」


孝也の疑問に



「特にこれといった理由なかったんだけど、今、私の中で決めたことがあるの。」


「決めたこと?」


孝也だけでなく、実況席の二人も息を呑んだ。


「崎坂くんたち、

いつもすごく楽しそうだなって。

うらやましいなって思ってて。」


「そんな、うらやましいだなんて」


「最後まで聞いて。

私が本当にうらやましいって思えるのは、

今、崎坂くんが言ってた将軍とか侍の話

正直すごく子どもっぽいけど・・・・」


(グサリ!) 

孝也のハートを射貫く音



「ほんと子どもっぽいんだけど・・・・」



(グサリグサリグサグサグサグサグサ・・・!)

孝也のハートを次々と射貫く音




「そういうの

恥ずかしがらずに出来ちゃうところが、

ありのままの取り繕ってない関係って気がして、

うらやましかったの。

だから、将軍の崎坂くんに

こんなことお願いするのは場違いかもしれないけど、

私も仲間に入れてくれてほしいの!!

平民からでいいから。」



・・・・



「平民から?」


その一言にニヤリとする太郎



孝也はすでに八千草の話の内容を整理しきれていない。


ハートが射貫かれ、キャパオーバーの様子


一方、実況席も実況すべき言葉が出てこず

ただただ目を丸くして八千草咲苗を直視していた。



三十秒の時が過ぎ



「あ、 いや、 えっと、 

八千草さんなら大歓迎だよ。

平民なんかじゃなくて

姫として向かい入れよう。」


射貫かれていた孝也が息を吹き返した。


一方実況中の太郎は

おうおう、俺のときとの扱いの差が天と地ほど違うじゃねーかと心底不満げ。



こちら実況席

孝也が息を吹き返したことで

俺のさらなる不満が積もる模様



「やった!嬉しい!!

でも私、姫だなんて柄じゃないよ。」


「じゃあ、何がいい?

もちろん平民以上で!」


どうしても俺を一番底辺に置いときたいらしい。


「じゃあ、侍の嫁候補はどうかな?

って図々しいよね?」


どうかな?っておいおい、

なんじゃ、そりゃ。

侍の嫁候補はねーだろ、嫁候補は。

って侍は駿じゃねーか。

駿狙いなのがバレバレなんだよ。

図々しいの自覚しててよく言えたな。

そんなの将軍気取りの孝也が許すわけねーだろ。



「あい分かった。駿にも伝えておこう。」



ちょちょちょちょちょーーい!!

嘘だろ!?

正気か!?

あの女好きなら

神さえ恐れるあの孝也が

駿の、あ、いや侍の嫁候補で許すのか。


っていうか侍の意思は?


うむも言わさずに八千草咲苗の役職は決まった。

無論、駿も実況席から見守ることしかできない状況である。

目の前で本人の意思を確かめることなく嫁候補が決まる駿の様子は・・・


さすがに同情する余地があった。



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