【妻シリーズ第一弾】妻は悪役令嬢(?)で押しかけ女房です!
udonlevel2
悪役令嬢は押しかけ女房なんです!
第1話 巷で噂の悪役令嬢が突然やってきました。
それは、青天の霹靂であった。
王城から届いた手紙、それはいつもの事でなんら不自然ではない。
だが内容に問題が山積みだったのだ。
「この手紙の内容は本当ですか?」
「確認したところ、事実のようです」
やつれた表情で口にした執事に、私は溜息を吐いた。
書かれいてた内容は、王太子の婚約者であった、リコネル・ファーネス公爵令嬢を妻として娶って欲しいと言う内容だったからです。
件の公爵令嬢と言えば、学院で多数の問題を起こし、退学になった令嬢で、別名悪役令嬢と名を馳せている。
悪役令嬢……と言うのも、とある民衆の間で有名な小説の中からきている言葉らしいが、私には彼女がそんな事をする人間にはどうしても見えなかった。
どちらかと言えば天真爛漫、裏表の無い屈託の無い笑顔、そして悪戯をする時の笑み。
幼い頃の彼女を思い出し、もう一度手紙を読む。
人に嫌がらせをするタイプの人間ではない彼女。それは私が良く知っています。
それなのに何故……そう思っていると、執事は更に言葉を続けた。
「何でも、王太子様は男爵令嬢を妻にすると公の場で……そこでリコネル様を糾弾したそうです」
「なんと言う事をっ!」
「数々の悪事に関しては、リコネル様は一切関わっていないにもかかわらず、男爵令嬢の言葉を鵜呑みにし、リコネル様は……」
「……傷ついているだろうな」
「恐らく……」
執事もリコネルの事は昔から知っている。
美しい少しカールした金髪に美しい容姿、多彩な趣味を持ち、公爵家に守られながら執筆活動をしている。
先ほどの悪役令嬢と言う名も、リコネルが捜索した小説から出た言葉の一つだったのです。
利益を生む彼女を公爵家が我が家に嫁がせる理由は解りません。
私は35歳を過ぎ、見目麗しくも無く、残念な事に筋肉の塊のような男。
更に言えば既に禿げております。
こんな誰もが結婚したがらない男の元へと、今まで嫁ぎたいという女性も無く、王家の血筋があるのだから愛の無い結婚をと国王に言われたものの、お見合いした女性から全員フラレタ悲しい存在なのです。
その状況をリコネルが知っているかどうかは別として、彼女が本当に私の元へと嫁いでくるのでしょうか?
私を見てがっかりして、人生を儚んだりしないだろうかと心配していると、メイド長が走りながら「旦那様!!」と叫んでいる。
「一体何事です?」
執務室から出てそう口にすると、メイド長は震えながら「それが」と口にしました。
すっと震える手で指を指した先は窓。
私は首を傾げつつ窓の外を見ると、一台の高級そうな馬車が止まっているのが見えました。
家紋を見て更に驚きます。なんとリコネルの家の公爵家のものでした。
「これは……一体」
「それが……リ……」
「リ? まさかリコネルが乗っているのですか?」
「その通りなのです! 『押しかけ女房になりますわ!』 といって既に馬車から鞄一つ持って玄関に!!」
「嗚呼! なんと言う事でしょう!!」
思わず私も叫んでしまいました。
急ぎ近くにある鏡の前に立つと、己のチェックを始めます。
ヒゲ……大丈夫、整えていますね。もみ上げからあごひげまでシッカリ整っています。
眉は……薄くしかありません、問題は無さそうです。
光る頭は諦めましょう。
「こうなっては仕方ありません、彼女が私の元へ押しかけ女房となるのなら押しかけられてしまいましょう!」
そう言うと私は颯爽と玄関へと向かいました。
リコネルとの最初の出会いは、彼女がまだ5歳、王太子の婚約者になる寸前の事でした。
城に用があり出向いた私と鉢合わせしたリコネルは、とても愛らしい笑顔で挨拶をしてくださったのです。
この国では、見目麗しい者は優遇され、見目麗しくないものは冷遇される。
本来、第一王子であった私が国王になるはずでしたが、見目麗しくないとされ、弟が王位に付いたのも今では懐かしい話ですね。
王太子であった私はそれらを剥奪されるかのように辺境へと飛ばされ、そこでは同じ様に見目麗しくないとされた者たちが送られてくる牢獄のような世界だと世間では言われています。
ですが、領地は潤い、宝石や貴金属、職人も多く存在し、第二の王都と呼ぶものも多い。
それがまた、弟である王には面白くない話のようで、何かあると直ぐに「結婚相手も見つからぬくせに」と言って来るのです。
それらをスルーしながらも、国の政が苦手な弟に代わり政務をする事も多く、魔法で書類のやり取りこそするものの、実際にあったのは本当にリコネルが5歳の時のみなのです。
あの頃はまだ髪が少しだけ残っていたと思います。
クスクス笑う周りなど気にせず、リコネルは一言私にこういったのです。
『まぁ……素敵な殿方……』
まるで初恋をしたような表情に思わず苦笑いが出てしまいましたが、今にして思えば、本当に初恋だったとしたら何にも勝る光栄だと思っています。
カツカツと足を鳴らし、向かった玄関のその先には――。
「会いたかったですわ! ジュリアス様!!」
美しい金髪をなびかせ、頬を赤くしながら美しく微笑むリコネルの姿がありました。
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