甘えたい幼馴染は「なんでも言うコト聞く券」を持って、キスをしたいと迫ってくる
ヨルノソラ/朝陽千早
一章
プロローグ
俺──
メリットよりもデメリットの方に目が向いてしまうせいか、結婚というものにあまり魅力を感じられないのだ。
だからといって、一生独身貴族を貫きたいわけでもないのだけど、今のところ結婚には消極的な思想を抱いている。
結婚を切望している人たちは、一体なにが目的で結婚を望むのだろうか。
特に、従姉妹 (今年で三十路)なんかを見ているとよく不思議に思う。
年始に、親戚一同で集まった時も、彼女は会話の節々で結婚したいと嘆いていたし、「男紹介してくれ」と俺に頼んでくる程度には結婚というものに飢えていた。
結婚は義務じゃないのに、どうしてそんなに誰かと結婚したがるのか。俺にはそれがイマイチわからない。
まあ、あれだな。俺に恋愛経験が全くないのが原因かもしれない。
恋人ができたら、結婚願望が湧くってパターンもあるだろうし……。
ちなみに、恋愛には人並みに関心を持っている。
恋人が欲しいとは思っているし、これまでも誰かを好きになったことはある。もっと言えば、今も気になっている子はいる。けど、出来ないんだよなカノジョ……。
非モテのくせに、自分から行動を起こせないヘタレなのが最たる原因だろう。
とはいえ、今年は大学受験の年……今、カノジョを作るのはいささか時期が悪い。
だから、俺が直接誰かに好意を伝える予定はなかった。
結局、俺の高校三年間には青春の「せ」の字もないまま、終わるのだろう。誰かに告白されれば話は別だけど……そんなのは天文学的確率である。
もし来世があれば、二回目の高校生活は頑張ろ。うんマジで。
……なんて、思っていた五月の下旬。
休日を家で謳歌していると、突然インターフォンが鳴った。
親は出張中で、妹は昨日から出掛けている。さしずめ、俺以外対応できる人がいない状況。
重たい腰を上げ、玄関扉を開けると……、
「あれ、日比谷か。どうかしたか?」
そこには幼馴染がいた。
なんの用かと訊ねると、彼女は胸に手を置き一呼吸置く。
そして、何か決心したのか目の色を変えて、
「──私と結婚してください」
確かにそう言ったのだった。
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