第2章:男性だけの世界
2-1 病室にて
「ん、、、」
ゆっくりと目を覚ます。知らない天井が目に入る。ここは、どこなんだろう。何もわからない。ただ病室だということはわかる。ぼやけた意識の中で、見知らぬスーツ姿の男性が僕を覗き込んでいる。
「愁ちゃん、わかる?咲父さん、夏、愁ちゃんが目覚めたよ。」
その男性は、椅子で寝ていた二人の男性を起こす。一人の可愛らしい中年男性が僕に話しかける。
「愁ちゃん?わかる?」
「俺、先生呼んでくる。」
もう一人の若い男性は、出て行った。
僕は、この三人の男性を知らなかった。けれど、どこかで出会っている人達だと感じる。なぜかはわからないけれど、初めて出会う人達ではない気がする。
しばらくすると医者が入ってきた。
「山口さん?わかりますか?」
「ん、、」
僕は、ゆっくりとうなずく。先生は、少しの問診をした。
「もう大丈夫ですよ。数日経てば、よくなります。よかったですね。」
先生は、三人の男性に伝えて出て行った。
三人は、泣いていた。
「俺、清父さんに連絡してくる!」
若い男性がまた出ていった。
僕は、また眠たくなり、目を閉じた。
これは夢だろうか。家族みんなで夕ご飯を食べている。お父さん、お母さん、皐姉と夏姉。この光景が当たり前だけど、どこか遠くて違う場所のように思える。
照りつける朝日に僕は、夢から目を覚ました。昨日より意識がはっきりしている。病室には、昨日の可愛いらしい中年男性と若い男性そしてお父さんがいて、スーツ姿の男性はいなかった。僕は、昨日よりも鮮明にこの二人のことを知っている気がした。
昔からどこかで繋がっている関係、、、
それがどこなのかはわからないんだけど、、、
少しだけ身体を動かしてみる。だいたい思い通りに動かすことができた。起き上がってみると、少し身体が痛かったが、問題なさそうだ。朝日が身体全体にあたり、気持ちいい。
「愁?起き上がって大丈夫なのか?」
僕に気づき、心配そうにお父さんが話かけてきた。
「うん。」
僕は、うなずく。
「よかった。本当によかった。」
そう言うと、強く抱きしめてくれた。僕たちに気づいたのか、中年男性と若い男性も起きた。
「もう心配かけんなよ!」
若い男性は笑顔で僕に話かける。その目には、涙を浮かべていた。中年男性は、本当によかったと言い泣いていた。
僕は、しばらくしてお父さんに質問をする。
「隣にいる二人は、お父さんの知り合いなの?」
三人が絶句していた。
「わからないのか?咲父さんと夏だよ。」
お父さんは、僕の目を真剣に見つめる。
「ん、、どこかで会ったような気はするんだけど、、、、、」
「そう、か、、昨日の人は、わかるか?」
「ん、、、わからない、、かな、、」
お父さんは、悲しそうな顔をした。
「ごめんなさい、、、」
沈黙が、病室を覆う。
みんな、悲しそうな顔をしている。
ごめんなさい、、、、、、、、、、
僕の言葉が、病室に虚しく響いていた。
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