第百九十三話 女神の収集品

そのさわがしい中――。


女神はパチンとゆびらす。


すると、彼女の周囲しゅういから剣ややりなどがあらわれた。


その不思議ふしぎ現象げんしょうを見たリョウタたちは、騒ぎを止めて食い入るように見ている。


現れた本数ほんすうは数え切れず、無数の武器が彼女をまもるようにちゅういている。


「さて、おしゃべりはその程度ていどにしてそろそろ始めましょう」


女神がそういうと、彼女のまわりに浮いていた武器がリョウタとレヴィ、ルバートたちへとき出された。


今にもりつけようと、そのかがややいばを向けている。


それを見た全員が持っていた武器をかまえる。


ルバートは剣――。


イルソーレはおの――


ラルーナはチャクラム――。


そしてレヴィは戦争と死の神と呼ばれたオーディンが持っていたといわれるやり――グングニル。


リョウタには武器はなく、戦場に落ちていたたてひろったのか、それを前に突き出しながらレヴィの横に立っていた。


「あら? あなた、良い物を持っているわね。でもその槍は投擲とうてきようなのよ。そうやって使うものではないわ」


「なッ!? そうなのか!?」


女神はレヴィの槍を見て、小馬鹿こばかにするような言い方で注意ちゅういした。


言われたほうのレヴィは、顔をにしてたじろいでいる。


女神の言うとおり――。


グングニルとは、けしてまとはずさず、手元てもともどってくるといわれる投擲とうてきようの槍である。


それを知らずに、当然のようにり回しているレヴィを見れば、女神が笑うのもしょうがないだろう。


「たしかにゲームじゃオーディンがげてるイメージだよな……」


「リョウタッ! 知っていたのなら何故今まで教えてくれなかったんだ!? 私がずっとはじをかいていたんだぞ!」


リョウタは、今にも泣きそうな顔でわめくレヴィを落ち着かせようと、できるかぎおだやかな声を出して返事をする。


「わりぃわりぃ。でもだいたいのリメイクばんじゃ竜騎士りゅうきしのテコ入れのためドロップできるようになってたし。それにあまりにもお前に似合にあっていたからさ」


「そ、そうか! そんなに私に似合っていたか! それはしょうがないな……うん! それはしょうがないことだ」


レヴィはリョウタの言っている意味いみをほとんど理解りかいしていなかったが。


ただ最後さいごの言葉だけをひろい、その場でうれしそうにしていた。


「……レヴィって、どうしてあんなにチョロいんだろう……。ラヴィ姉さんはそんなことないのに……」


「だね……。女神が世界をほろぼそうとしているけど……。レヴィの将来しょうらいが心配になるよ……」


その様子ようすを見たイルソーレとラルーナがとおい目をして彼女を見ていた。


ルバートはそんな四人を見て、一人微笑ほほえんでいる。


「まあ、使い方なんてどうでもいいんだけどね。それよりもあなたの槍に負けないくらい……。いえ、それ以上いじょうのものを見せてあげるわ」


女神がそういうと、彼女の周りに浮いていた剣や槍がかがやき始めた。


そして、それらの武器が神々しいものへと変化していく。


「こ、これはッ!?」


レヴィが声をあげて驚愕きょうがくする。


女神はそんな彼女を見て嬉しそうに笑みを浮かべていた。


「どうかしら私のコレクションは? なかなかのものでしょう?」


女神がいうコレクションとは――。


今変化させたものだった。


彼女の周囲しゅういにあった武器が、エクスカリバー、神剣グラム、妖剣フルンティングなどの伝説級でんせつきゅうの剣へと姿を変えてみせたのだ。


「せっかく見せてあげたのだから、剣だけで戦ってあげるわ。さて、まずは誰から来る? それとも全員でかしら?」


そして女神は、両手りょうてを広げて向かってくるようにさけぶ。


「さあ! 私を楽しませてみなさいッ!」

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