第160話 それぞれの場所で
※それぞれトーマス・久々登場のダリウス・アーチーの視点で進みます。
読みにくいかも知れません…。
「クソ……ッ! 何故こんな所に魔獣が現れるんだ!?」
イーサンの読み通り最後の視察場所で事を起こすとは勘付いていたが、まさかダンジョンの魔物を転移させて来るとは思わなかった。
完全にこちらの読み間違いだ。
陛下をどうにか安全な場所へ移動させたいが……!
森の魔法陣から溢れているのだろう、夥しい数の魔物と一緒に、高ランクの魔獣まで現れ始めた。
騎士たちが何とか食い止めているが、圧倒的に数が足りない。
見張りは就けていたが、この先にいるハワードたちは無事だろうか……!?
「イーサン! 陛下を連れて後方へ! お前たちは隊列を組め! 一匹足りとも逃がすなよ!」
「ハッ!」
騎士たちに命令を下し、アーノルドは剣を構え勇ましく前へと出る。
あれでも近衛騎士だ。何とか持ちこたえてくれ……!
「ユイトくんっ!」
後ろからオリビアの叫び声が響くが、オレたちはここを離れられない。
「おにぃちゃんっ!」
「にぃに──っ!」
ハルト、ユウマ、すまない。
ユイト、何とか耐えてくれ。
必ず助ける。
「アーノルド! 魔物は任せた! オレはコイツらを何とかする!」
「トーマス! あの数だぞ!? 一人でやれるのか!?」
アーノルドが叫ぶが、そんな事は分からない。
目の前に広がる夥しい数の黒い靄。禍々しい渦の中は真っ暗で先が見えない。
これがユイトたちの言っていた靄の正体か……?
これなら生憎、オレの得意分野なんだがな……。
「……同じ属性同士、仲良くしようじゃないか」
オレは両手を翳し、魔法を発動させる。
『 喰らい尽くせ《
──待ってろよ? 今すぐお前の正体を暴いてやるからな。
*****
「おいおいおい! 何でこんなに出てくんだよ!?」
指名依頼で森の中に張られた馬鹿デカい魔法陣を交代で見張る事、約二週間。
俺たち以外にもギルドで選ばれた十数組のパーティで、計五か所の見張りを担っている。
もうなんも起こらねぇんじゃないかと気を緩めた途端にコレだ。
「知らないよ~っ! でも村には絶対下ろしちゃダメ! 私たちで何とかしないと!」
「ダリウス! モリー! 喋ってると舌噛むよっ!」
「うおぉおっ!?」
「きゃぁああっ!?」
ルーナが自分の背丈ほどもある剣を大きく振り回し、襲ってきた魔物共を薙ぎ倒す。
斬ってもダンジョン内じゃないからドロップ品なんか出ねぇんだな……。
すっげぇ損してる気分なんだけど……!?
「バッカ! おま……! 俺等まで斬ろうとすんな!!」
「ハハ! 油断してる方が悪いんじゃないかい?」
ルーナは育ててもらった元冒険者の叔母さん譲りなのか、変なとこで思いっきりがいいんだよな~!
マジで死ぬからやめてくれ!!
「お前たち! 真剣にやれ!」
「そうですよっ!?」
同じ見張りに就いていたアーチーに注意され、それに便乗したのかコーディまで怒鳴ってくる。
「終わったらユイトくんたちのご飯が食べれるんですからねっ!?」
「「「そうだったぁ~っ!!!」」」
この二週間、あの店にどれだけ食べに行きたかったか……!
俺たちの殺る気に俄然火が点いた。
「「「秒で終わらせてやる!!!」」」
*****
「お前たち……! そんなんで大丈夫か……!?」
ユイトくんのご飯と聞いて、あの三人の士気が段違いに上がった気がする。
まぁ、私も同じ様なものだが……。
「アーチーさん、あーなったらムリですよ……。食う事しか考えてないか、ら! っと……」
魔物を斬り倒しながらも、あいつ等と同じパーティのジュリアンはやれやれと肩をすくめた。
「そうか……、ジュリアンも、苦労する、な……っ!」
「……(コクコク)!」
「ハハ……、もう慣れました……!」
もうどれほど始末しただろうか……? 周りには魔物の死体がゴロゴロと転がっている。私の矢も残り少なくなってきた……。
これが無くなったら私も剣で戦うしかないか…。
あまり得意ではないんだが……。
「ガウッ」
すると、キースの従魔であるアドルフが口元を血濡れにしながらキースに駆け寄ってくる。
どれだけ噛み殺したのだろうか……?
さすがグレートウルフだ……。
「……何? アドルフ、どうかしたの……?」
「グルルルル……」
「……そう、……自分も行きたいって?」
「ガウッ!」
「……ちょっと待ってて……。……アーチー」
念話が終わったのか、キースが私に駆け寄ってくる。
アドルフも一緒だが、正面から見ると血や緑の液体で凄い事になっていた……。
これは洗ってやらないと……。
「どうした?」
「……ユイトくんの匂いが消えた、って……。……アドルフがハルトくんたちの所へ行きたいって……」
「ユイトくんが……!? ハルトくんたちは何処にいるのか分かるか?」
思わずアドルフの方を向くと、今すぐにでも駆けて行きたいという思いが伝わってくる。
「ガウッ」
「……そうか……。よし、いいぞ。助けに行ってこい。ここは何とかする」
「……アドルフ、あの子たちを頼んだよ……」
「ガウッ!」
了承すると、アドルフは風の様に駆けて行ってしまう。
従魔が主人を置いて、しかも他人を助けに行くなんて聞いた事がない。
キースもアドルフも、余程あの子たちを気に入っているのだろう。
瞳を怖がられないという事が、キースにとってどれだけ衝撃な事だったか。
「ブラント! ビリー! アドルフはハルトくんたちの下へ行った! 気合を入れるぞ!」
「ヘイヘイ! 見てたっつーの! こっちは任せとけ!」
「あの血濡れの姿を見せて、ハルトくんとユウマくんが脅えないといいんですが……、ねっ! っと……」
「「あぁ~……」」
「……どうしよう……!」
アオォオオ──────ン……
確かに……! そう思った途端、森の奥でアドルフの遠吠えが響いた。
「あ、アイツ仲間呼びやがった─っ!」
「これは相当な数が助けに行きますねぇ」
「私たちには滅多に呼ばないのに……」
「……仕方ないよ……。お気に入りだもん……」
あぁ……、私も早く始末して、あの店で美味しい料理が食べたい……。
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