第25話 第一回作戦会議 (おてつだい大作戦)
現在、オリビアさんと一緒に冒険者の人たち用に一皿でも満足するメニューを考えています……。
でもなかなか良い物が思いつかなくて、メニュー会議は難航中……。
「う~ん……。あの子たちは身体いっぱい動かしてるからいっつもお腹空かせてるイメージしかないのよねぇ」
「冒険者の人って、体力使いそうですもんね」
「お店に来る人たちは大抵、お腹にたまりそうなお肉のメニューばっかり注文するから」
「野菜もたくさん食べてほしいですね」
「おやさい、だぃじ、です!」
「ぱんも! だぃじ!」
ハルトとユウマは、おてつだい大作戦としてメニュー考案に参加してくれています。
そうね、お野菜もパンも大事よね~、とオリビアさんはニコニコ顔。
皆に美味しいものを食べてもらいたいと意気込んでいたけど……。
この世界では、日本のスーパーやコンビニで当たり前に手に入った食材や調味料が身近に無い事が一番の問題だった。
米に魚介類にうどんやアイス……、手に入れる術が限られている……。
魚介類は海の近くか、貴族くらいしか食べれないそう。もし見つけても、匂いが酷いから食べれないとオリビアさんが教えてくれた。
小麦やライ麦はあるから、稲もどっかにあるかな? ニョッキはあるけど、この近辺では細長いパスタは作らないみたいだ。
鶏ガラスープやコンソメがないのは、ただ単に食材自体の味が美味しいからあまり使用しないのだと思っていた。
実際に調味料棚に置かれているのは、極々わずかなスパイスやビネガー、小麦粉、香草等。オリーブ油とごま油に似た物はあった。醤油やソース、マヨネーズは無いみたい。
最初に料理を教えてもらった時に、塩・胡椒・砂糖が少し高価なのは分かってたけど、ここまで無いと、どうすればいいか分かんないなぁ……。ハァ~……。
「オリビアさん、このスパイスって何ですか?」
「スパイス? う~ん、結構前に買ったんだけど忘れちゃったわ~! 売れないからって安くしてくれたんだけどね~」
見えるようになった便利なメモ(鑑定じゃなくてメモと言うことにした)を使うと、このスパイスの中身はターメリックとナツメグ! これは王都に行ったときに商人さんに珍しいからと言われ購入したけど、使い道がよく分からないと言って棚にそのまま放置していたらしい。
スパイスがあるならカレーも出来るんじゃないかと期待してしまう…!
お母さんが作ってくれたカレーが食べたいな…。難しいだろうけど…。
「食事が終わったら、きっと皆さん、甘いものも欲しいですよね」
パンや、クッキーみたいな焼き菓子はあるけど、やわらかいスポンジケーキは無いそうで……。パウンドケーキに近いものはあるようだけど、ズッシリしてものすごく胃にもたれるってオリビアさんは言ってた。
果物がものすごく美味しいから必要ないのかな? とも思ったりする。あのふわふわのスポンジに、生クリームと果物を一緒に挟んだらすっごく美味しいと思うんだけどな~。
砂糖が他の食材より高いから微妙かな? あ、クレープだったら作れるかも?
お店の棚にある小麦粉も、強力粉に近いもので薄力粉はなかった。メモにはパンやピザに最適と記されている。
ピザもいいな~! 捏ねたり具材をトッピングするのもハルトとユウマに手伝ってもらえるし!
ピザのレシピという欄を見るといろんな種類のトッピングが出てくる…! 楽しい…! 郵便受けに入ってたピザ屋さんのチラシを見るの楽しかったもんな~。
「ハルト、ユウマ、ピザだったら一緒に生地をこねこねして、好きな具材をトッピングできるかも」
「ぴざ? おにぃちゃん、ぴざって、なんですか?」
「ぴじゃ、おぃちぃの~?」
あぁ、そうだ。ハルトとユウマは、まだ食べたことなかったかも……。
「そうだよ。まぁるい生地に、トマトソースと美味しい野菜をのせて、上にチーズをのせて焼いたら完成! とろぉ~っとチーズが伸びて、すっごく美味しいんだよ~!」
「ぼく、ちーず、すきです! ぱたーたも、すき!」
「ゆぅくん、まぃしゅのせちゃぃ!」
「パタータもマイスものせたらもっと美味しくなるかも!」
「ほんとぉ? ゆぅくんいっぱいのせりゅ!」
「ぼくも!」
ハルトとユウマは野菜の名前をこっちに来てから覚えた物が多いから、ほとんど違和感がないのかもしれない。僕は最初戸惑ったけど、メモが出るようになってからはすごく助かってる。
「ねぇ、ユイトくん?」
「どうしたんですか? オリビアさん」
オリビアさんがとっても素敵な笑顔で訊ねてくる。
「私もピザって言うお料理、食べてみたいわ! 細長いパスタも甘いのも全部!」
「えっ!? 急にどうしたんですか?」
「だってぇ~! ユイトくんたら一人でいろんなお料理のこと言うから、私も食べたくなっちゃったのよ~!」
どうやら僕は、ブツブツ独り言を言っていたらしい。
恥ずかしい……!
こうして第一回作戦会議では、メニューにオリビアさんの食べたいものが無事に追加されたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。