俺の妹が美少女の癖にネガティブ過ぎてウザい
@kenitiro1115
第1話 何故妹はこんなにも残念なのか①
俺の通う星川高校の生徒で砺波川千景を知らないものはまずいない。
全国模試3位を誇る頭脳に部活をやっていないにも関わらず足は県代表レベル、球を蹴れば流れるようにゴールに入っていく。
そして何より彼女が有名である所以はその類い希なる容姿だろう。長くのばした綺麗な黒髪に水晶の用に輝く瞳におよそ文句のつけようが無い骨格。端的に言えば美しい。
そんな彼女の圧倒的なスペックから男子は勿論女子すらも話しかけるものはいないと言うまさしく高嶺の花。
星川高校の誇りその物だ。
...と、ここまでが一般的な砺波川千景のイメージだろう。まあ何も嘘は混じってはいないが。
けれど、そんな千景の兄である俺や家族だけが知っている彼女は全くの別物と言ってもいい。なんせーー
「...死にたい。」
部屋の隅で虚ろな目をしたままうずくまって、気が滅入りそうな程根暗オーラ放ってるいる奴が学校の誇りなんて思いたくもないだろう。
...こいつが誇り?ホコリの間違いじゃないだろうか。ルンバに吸われても可笑しくないレベル。
突然部屋に来た千景は一言も発することなく体育座りに移行し、それからは一分置きに「...死にたい」とだけ呟くbotとかしていた。
かれこれ20分程この有り様であるがどうやら俺が話しかけないとこの等身大呪いの人形は消えてくれないらしい。面倒くさ。
「おい千景、俺に用があるなら直接話しかけろ。回りくどい通り越してシンプルに嫌がらせだぞそれ。」
「ご、ごめん...。その...私なんかが喋りかけたらお兄ちゃん吐くんじゃないかって思って...。」
「お前の声聞いただけで吐いてたらこの年まで確実に生きてねぇよ。」
多分赤ん坊の時にくたばってると思う。と言うかそんな能力あったら俺どころか砺波川家その物が危ないわ。
さて、どうやら今日の千景は何時もの五倍はネガティブな様子だ。普段からこの五分の一もあることにも文句を言いたいがまあいい。
さっさと終わらせて一眠りにつこう。
「で、何があって俺の所まで来たんだよ。」
「...お母さんに頼まれてスーパーにお使いにいかなくちゃ行けないの。」
「ふーんそれで?」
俺が話の続きを促すと千景は視線を下におとしあからさまに言いよどむ。そして数秒ほど経った後、意を決した用に口を開いた。
「...店員さんと話すのが怖いから代わりに行って欲しいなって。」
「じゃあな。」
「わぁぁ!待って待ってよ!置いてかないでよ!!」
自分の部屋から出ようとすると千景は物凄い力で俺の手を引っ張り食い止めようとする。
ぐぉぉどっからこんな力が出てくんだよ普通に痛いんだけど!腕から鳴っちゃいけないような音してるんだけど!!
そう、俺の妹千景は破滅的なレベルのコミュ障なのだ。クラスメイトは勿論、学校の先生や近所の人、果ては自分の親にすらまともに会話ができないレベルだ。
唯一会話が成り立つ俺でさえ自分から話しかけられないなど最早病気とかその辺に近い。
学校では孤高の美人なんて言われてはいるが単に友達を作れないだけだ。
どうせ今回も母ちゃんの頼み断れなかっただけだろうに。なんで俺が尻拭いしなきゃいけねぇんだよ。
強く握られた手を振りほどき俺は気だるそうな声で話しかける。
「親の頼み位聞いてやれよ。苦手なのは解ってるけどそれを俺が全部やるのは違ぇだろ。」
その言葉を受け千景は無理矢理笑顔を作り口を開く。
「...そうだね、ごめんねお兄ちゃん。自分でやってくるよ。」
そう言って俺の前を通り玄関に向かおうとする。...け、何無理してんだよ手震えてんじゃねぇか。
千景は普通の人から見れば特別な人間、いやまさしく選ばれた人間だ。けれどだからと言って俺が無理に苦手な事をやらせる理由になるのか。
なるわけねぇよなボケ。
俺は千景を追い抜かし彼女の持っていた財布をパクる。
「ええ!?お、お兄ちゃん何するの!」
「はぁ?お前こそ何言ってんだ?」
俺は振り返りながら気持ちの悪い笑みを浮かべ答えた。
「俺はぜんぶやるのがおかしいって言ったんだ。...別に手伝わないなんて言ってねぇよ。」
千景はその言葉に驚きつつも俺の方に足並みを揃え横に並ぶ。そして軽く舌を出しながら不満げに言った。
「...ばーか。」
そのお返しに軽く凸ピンを食らわせ俺達はどうしようもないことを言い合いながらスーパーに向かった。
...たっく可愛い妹がいるとろくなことがねぇよ。
俺の妹が美少女の癖にネガティブ過ぎてウザい @kenitiro1115
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