3話 吸引力が違う。

「敵、航空部隊及び地上部隊接近、姫様出撃願います!」


格納庫内のスピーカーから、管制官の声が流れた。


その後すぐ、カタパルトが起動し、地上に向けて式神が射出される音が聞こえた。


「姫様・・・」


シルスはコックピット内で呟いた。


「あの式神は、あなたの妹さん?」


式神に聞いてみたが、答えは返ってこなかった。


「もし、この式神を上手く操縦できたら、わたしも行くの?」


今までの流れから行ったら、そうだろう。

その為の、女将だし・・・少将だし・・・


「ふう」

「怖」

「戻りたい」

「戻って、また思惟たちと、秘密の生活を続けたい」

「ふう」


呟いた言葉たちが、コックピットの白磁の様な壁に、吸い込まれていくような気がした。


吸引力が違う。


別に掃除機のコマーシャルではない。

今まで壁が、自分の言葉を、吸い込むと感じた事はなかった。


言葉だけではなく、意思も吸い込まれて行く。


「わたしの言葉や意思を欲しているの?」


答えは返ってこなかったが、多分、間違いない。

ちょっと気持ちいい。


「かっか~」

はなもりが足もとで呼んでいる。


「何?」

「司令部から、戦闘配備中だから、甲冑付けて置くように言われてますけど、どうします?」


「えっと・・・」


どうしよう、全裸でいるよりかは、安全かな?


「うん、それじゃ、お願い!」


シルスが言うと、幾つかの作業用アームが、式神に甲冑を着せ、さらにボトルで固定した。


重い・・・少しだけそんな感じがした。

この式神が、そう思ったから?




つづく



いつも読んで頂き、ありがとうございまする\(^▽^)/


シルス・・・12人の思惟の1人。思惟の中では地味な方。 

はなもり・・思惟専用式神のメカニック。


意都・・・妖精のお姫様。王位継承順位500位だった。貧乏貴族出身。

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