5話 リスと巨鳥

「でも!これからどうしよう?式神食べちゃったし!」


高層ビルのような巨木の枝から、シルスは1人、妖精世界を見下ろした。


迎えに来た式神は食べちゃったし、また新たなお迎えが来る気配もなかったし・・・


辺りを見渡すと、巨木の下の方から、リスが1匹、登ってきていた。


シルスを見つけたリスは、「こんなところに人がいる!」と目を丸くして驚いた。


そして、小鳥のような鳴き声で、ほろん、ほろんと鳴いた。

きっと「人がこんなところまで来て大丈夫なの?」的な雰囲気だ。


それはこっちの台詞でもあった。

この高さだと、いくら木に登れるリスでも危ない。


黒と白の鳥が、口ばしをカタカタと鳴らすと、リスは納得したように頷き、にやりとほほ笑んだような気がした。


きっと「少女の冒険者よ。幸運を祈る!」的な雰囲気だ。


そしてリスは、再び巨木の頂点を目指して、登り始めた。


「リスちゃんの幸運を祈ってるよ」


黒と白の鳥が、羽を羽ばたかせて、シルスに背に乗るように誘った。


「それしかないよね」


シルスは、黒と白の鳥にの背に跨った。


「もうあの大鷲は来ないよね・・・」


辺りを見渡したが、それらしい者は見当たらなかった。


黒と白の鳥は、何のためらいもなく枝から、飛び降りた。

黒と白の鳥が軽く羽ばたくと、ふわりと浮きゆっくりと旋回した。


黒と白の鳥は、妖精の街の上空まで飛ぶと、街に向けて急降下を開始した。


「うっ」


息ができないほどの加速、それは、地元の遊園地のジェットコースターを、軽く超えるスリルだった!


シルスは必死に黒と白の鳥の羽毛を握った。

妖精の街に近づくと、妖精たちの姿が見えた。


黒と白の鳥の姿を見ると、妖精たちは見上げ歓喜の声を上げた。


妖精たちにとっては、かなりの巨鳥だ。


巨鳥は、歓声を上げる街の上空を抜け、小高い丘の方へと、向かった。

丘の上には、石造りの大きな建物があった。


きっと何かのお城だろう。


巨鳥は、その城の大きな庭に着陸した。


建物の中から、制服を着た妖精たちが駆け寄ってくるのが見えた。




つづく


いつも読んで頂き、ありがとー(≧∀≦)♪


シルス・・・12人の思惟の1人。思惟の中では地味な方。

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