3話 大鷲さん、食べちゃダメだぞ

妖精サイズのシルスから見ると怪鳥に近い大鷲は、大空の王者を誇示するかのように、ゆっくりと旋回した。


対して、シルスを咥えた黒と白の鳥は、狙われた獲物の様に怯えていた。

その怯えは、咥えられているシルスにも伝わった。


上空に旋回した大鷲は、黒と白の鳥を射程圏に捕えると、王者の目で見つめた。

黒と白の鳥とシルスは、その恐怖に震えた。


自然界で繰り広げられる、弱肉強食の一場面に過ぎないけど、自分が食べられる側になるなんて、思ったことはなかった。


そして、このシャッターチャンスを逃した悔しさ・・・

「・・・って、思ってる場合か!私!」


大鷲はシルスと黒と白の鳥目指して、急降下を始めた。


「ごめんなさい、私を許して・・・・」

シルスが、何かに嘆願した。すると?

「ひゅうー」

と風が吹いた。


それはとても心地の良い風だった。

その風に優しく包まれた様な気がした。


「大鷲さん、食べちゃダメだぞ」

誰かが甘い声で、ささやく声がした。すると、

「みゅうー」

と大鷲は甘えた声で鳴いた。


えっ?大空の王者大鷲が甘えた?

大鷲は、旋回した後、大空の彼方に去って行った。


とりあえず助かったかも・・・

黒と白の鳥は、地下世界に聳えるように立っている、巨木の枝に降りる事が出来た。


「思惟少将閣下、お初にお目にかけます♪

わたくしは、神将級式神のむつみと申します。

姫さまに代わりお迎えに参りました。」

と声がして振り向くと、3つお団子×2が、シルスの目の前で浮いていた。

神将級式神を名乗る【むつみ】さんは、どう見てもみたらし団子だった。


アソパソマソや、ゆるキャラみたいに、擬人化している訳ではない。

みたらし団子そのものなのだ。


多分、神将級なら会璃さんや騰子さんの同僚なのだろうけど・・・


「これは、どうしたものでしょう~か」

シルスは困惑した。


何処からともなく茶色の紙袋が飛んできた。

服代わりにしろ?ってことかな。


シルスは、とりあえず、紙袋の上の方を破り、ワンピースの様に着こなした。

着心地は、あまりよくはないが、裸でいるよりはましだった。


裸族の思惟なら、むしろ喜び全快状態なのだろうけど、恥じらい乙女全快のシルスには、それは無理だった。


それにしても、目の前の、みたらし団子は、めっちゃ美味しそうだった。

さすが神将級だ。


「思惟少将閣下、わたくしを食・べ・て」


みたらし団子は言った。


ここは地下の妖精の国だし、シルスも妖精サイズだし、命の恩人のみたらし団子が、「わたくしを食・べ・て」と言う事も、


あり・・・なのか?


神将級と言ったら姫様の側近の式神でしょう。


もしかして、これは通過儀礼の様なもの?

桃太郎の黍団子のようなもの?

食べちゃうと、鬼退治に、行かなくちゃならなくなるようなアイテム?


「思惟少将閣下、早く~」


シルスは、みたらし団子に、急かされた。



つづく  読んでくれてありがと(≧∀≦)♪

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