15話 ブリキの箱の中で・・・

エレベーター自体が遅いのか、遥か地下まで降りているのか、感覚的に長い時間に感じられる。


「わたしたちに、エレベーターを動かす手段がない。

主導権は向こう側・・・」


シルスは呟くと、エレベータの壁に寄りかかりながら考えた。


裸族の思惟は、床に座り込んで、コテカを外し、悦に入った表情で眺めていた。

キス魔の2人は、裸族の思惟の両側から、抱きついていて、愛を囁いていた。


エレベーターの室内の壁は、ブリキの様な材質で出来ていた。


まるで大きなブリキの箱に入れられた気分だ。


思惟オリジナルは、お洒落な雑貨屋さんで、ブリキの箱を買って、その中に宝物をしまっていた。


さらに、この旅館の主は代々、ブリキのおもちゃのコレクターとして有名で、旅館の一室には、ブリキのおもちゃ博物館があった。


ブリキには、色々縁があった。


地下に着いたら、ノスタルジーな、ブリキのおもちゃの世界が広がっていたりして・・・


地下の妖精たちにとって私たちは、どんな存在なんだろう?


地上に住む巨人?

妖精世界を破壊する使徒?


なんか、とんでもない怪獣になった気分だ。


妖精たちはこのエレベータの降下を認識しているはずなのに、エレベーターを止めてない。


何かの事情が変わったのか?

あのコテカで扉を開けたから?


どちらにせよ、共存は出来ないからこそ、妖精たちは地下に住んでる訳だし・・・


キス魔の2人は、シルスの周りにまるで壁があるように、パントマイムを始めた。

ダンスのセンスは無かったが、こちらは結構上手かった。


それを祝して、シルスは、キス魔の2人から、パンちゃんマイちゃんと変更して、

日記に記すことにした。


パントマイムの壁は、徐々に狭まり、シルスの息が掛かる程の距離に狭まってきた。

まるで小さな箱に閉じ込められていく気がした。


いや・・・気がしたじゃない。

多分、見えない箱に閉じ込められてしまったみたい・・・


動けない!


動きを止めれたシルスに、パンちゃんマイちゃんは、思い存分キスをした。

限りなく自分に近い存在との接触は、自他の境界を無意味にし、意識が統合されてしまいそうな気がした。


キス魔の強い欲求が、見えない壁を作り、私を拘束した?

ATフィールド的な?何この能力は!

充分、シルスを堪能した、キス魔のパンちゃんマイちゃんは、見えない箱を解き、シルスを解放した。


何!今のは? 

わたしが疲れてるだけ?

幻覚?

もしかして、人ではない部分の能力?

式神の能力?式神的な要素が現れたの?

パンちゃんマイちゃんは、覚醒したの?

私たちの、人ではない部分が覚醒?

シルスはゾッとした。


どっと疲れたシルスに、

「愛してるよ。シルスちゃん」

とパンちゃんマイちゃんは、囁いた。


多分、敵ではない存在。


多分、味方・・・その存在に、シルスは、ちょっとだけ、癒された。



つづく




いつも『思惟ちゃんと行く不可思議ワールド』を読んで頂き、

ありがとうございます。m(u_u)m


今話で、2章は終わりです。3章も、お楽しみに (・ω・)/



思惟たち ヽ(*'0'*)ツ


思惟オリジナル(15)・・・旅館の女将修行中


12人の思惟たち


【チーム・北の島】


α・・・ちょっとアホっぽい。弄られ少女。

β・・・ 賢そうな少女。

璃琥(りく)・・・高跳び少女。

女将の思惟・・・大人びた少女。


【チーム・南の島】

シルス・ ・・ デジカメ少女。日記を記す。

裸族・・・ コテカを装着した少女。

パンちゃん・・・ シルスと裸族が大好きな少女。

マイちゃん・ ・・キャラはパンちゃんと同じ。




【チーム・西の島】


ちーず・・・兄の狼図を嫁にしたい少女。

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