14話 知らないところに行くのって、怖い?

「思惟、これあげる。パイロット用の機内食だよ」


と姫さまから渡されたのは、見たことがない果実の載ったタルトと、牛ではない何かの飲むヨーグルトだった。


グロくはないけど・・・・グロくはないけど、未知の果実のタルトにちょっとビビった。


「美味しいよ」


姫さまに言われ、未知のタルトを口に運んだ。


「おぉ!」


未知の味がしたが、めっちゃ美味しかった。

牛ではない何かの飲むヨーグルトは、やたら濃い味が未知すぎて・・・

でも、飲めない事はなかった。


黄金の甲冑武者の胸コックピット内で、美味を楽しんでいる間、その甲冑武者は、思惟の部屋のクローゼットを開けた。


女将の間のクローゼットは、8畳ほどの広さがあり、元女将だった祖母の着物や持ち物が、仕舞ってあった。


中に入ると、壁一面に古い桐の箪笥が聳え立ち、古めかしい香りを漂わせていた。


思惟にとって、見慣れた景色だったが、巨大ロボットの様な武者の胸コックピット内から眺めると、すごく祖母の想いが心に沁みこんで来る様な気がした。

ほぼ魂だけの存在になったからなのかも知れない。


「ちょっと待っててください」


会璃(あいり)と騰子(とーこ)が、壁をガタガタ動かしだした。


「もしかして・・・隠し扉?」

思惟は、呟いた。

「思惟、直感が鋭いね。正解よ♪」

姫さまが反応した。


「何て言うか・・・・本当にこの旅館が首都だったんだ・・。」


ガタガタと古い隠し扉が開くと、エレベーター用の柵があった。

モニター越しに見る世界は、身体越しに見る世界とは、感覚的に違っていて、思惟は、その奥にある小部屋に入って、そこがエレベーターだとやっと気づいた。


会璃によって、柵は閉じられ、小部屋は密室になった。

思惟は、360度モニター越しに、その様子を見た。


「どうしよう・・・・」

「知らないところに行くのって、怖い?」


思惟を、背後から抱きしめている姫さまが聞いた。


「大丈夫、思惟に何かあった時は、あたしの責任だから、その時は、あたしも一緒に・・」


思惟の魂だけの身体に、姫さまの身体が重なり、姫さまの意思が、身体に伝わってくるような気がした。


すごく切羽詰まってる姫さまの意思・・・



つづく

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