10話 ちゃぷちゃぷしながら

もし、学校の帰り道に突然、黄金の甲冑の巨大ロボットが現れて、


「さあ乗って♪」


と言われたとしても、思惟は断っていたはずだ。

例え黄金の甲冑に、どんなに歴女萌えしたとしても、それは同じだ。


思惟は、そんなに軽い女じゃない (・∀・)キリッ


でも今の状況は・・・

閉鎖された街・・・

疲れすぎた身体・・・

離魂・・・

小さくなった自分・・・

夢の様に美しい妖精の姫さま・・・

黄金の甲冑の巨大ロボット・・・


「・・・・そう・・・これは夢だ!」


思惟は結論づけた。

そう結論づけすると、なんか気分が楽になった。


思惟と姫さまを乗せた武者の手は、ゆっくり上昇して、胸の前で止まり、

胸部コクピットのハッチが開いた。


「さあ、おいで」


妖精の姫さまに言われて、思惟はコックピットの中に入った。


コックピットは、白磁の様な素材で覆われており、操縦桿らしきものも白く、まるで芸術品の様に美しかった。


「ちょっと待っててね、今、面白いもの見せるから」


姫さまは、陶器で出来た椅子に座り、ハッチを閉めた。

2人だけの密室は、客室の内風呂と同じくらいの広さだった。


「行くよ♪」


姫さまが、そう言うと、蛇口ぽい穴から、温水があふれてきた。


「えっえっえっ」

「大丈夫よ。あたし専用の温泉付きコックピット♪」

「えー!」

「だってほら、操縦中に温泉に入りたくなったりするじゃん、だからメカニックに頼んで付けてもらったの♪温泉好きには必須だよね。

温泉付きコックピットって」


なんて我儘な姫さまだ!

操縦中くらい我慢しなよ!


「ちゃぷちゃぷしながら、戦闘指揮が出来るのよ」

「ん?」


ちゃぷちゃぷ・・・・は良いとして、戦闘指揮って何だろう?


「戦闘指揮って?戦闘するの?」

「ん?」


姫さまは首をかしげた。

その仕草は、可愛かったが・・・それはそれ!


「戦闘って、誰かと戦ってるんですか?」

「誰かって・・・とりあえず温泉に浸かって・・・気持ちいいよ」


姫さまに言われて、思惟は浴室と化したコックピットに腰を降ろした。

乳白色のお湯は、ちょうど良い湯量になると止まった。

お肌に優しいしっとりとした泉質だった。

乳白色に染まるんじゃないかと思うほど、お湯が肌に沁みこんできた。


「これは、絶対お肌すべすべになる!」と、思惟は心の中だけで、歓喜した。


でも今は魂だけの存在。

あの大きな方の思惟のお肌には関係ないかも(溜息)

いやいや、今はそんな事を考えている場合じゃない!


思惟は心を引き締めた。


姫さまは真剣表情で思惟を見つめた。


「敵・・・この街の状況は知ってるよね」



つづく

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