第293話 手放された剣
「へぇ……中々頑張るじゃねぇの」
ライカとの戦いは……ほぼ互角だった。いや、正確には、レイリアの力を借りていてもギリギリの状況だった。
「でも……流石にそろそろ決着着けないか?」
一方でライカはまだ余裕という感じである。
「お主……このままで良いのか?」
レイリアの声が耳元で聞こえてくる。
「妾が力を貸しているとはいえ、今のお主は少し早く動けて、少し強い力が出せているだけ……まるで今戦っている相手を倒すには決定打に欠けているわけだな」
「……じゃあ、どうすればいいんですか? おとなしく意識をアナタに明け渡せと?」
「いや……それは今は良い。どうせ、強情なお主のことだ。妾が無理矢理にでも意識を乗っ取ろうとすれば何をするかわからんからな」
……実際、レイリアに完全に意識を乗っ取られる前に、決着を着けなければならないと思っていた。
もし、仮にレイリアに体を乗っ取られれば、俺は俺自身の身体に自分でけじめを付ける必要があると理解していたのである。
「で……決着着けてもいいか?」
と、今度はライカがそう言ってくる。俺は剣を今一度手に握る。
すると、なぜかライカはニヤリと微笑んだ。
「……何がおかしいんです?」
「いや……お前、あんまり気をつけないタイプなんだろうなぁ、って思ってさ」
ライカの言っている言葉の意味がわからなかった。しかし、ライカは既に勝ち誇ったように笑っている。
「戦いってのは最期まで武器を握っていた方が勝ちなんだ。だけど、もし剣士が剣を失ったらどうだ? 槍使いが槍を、弓使いが弓を失ったら……それはもう敗北だよな?」
「……それはつまり、何が言いたいのです?」
その瞬間だった。持っている剣、吸魂の剣から、なぜかピリッとした電気を感じる。
「つまり……お前はもう剣を握れないってことだよ」
次の瞬間だった。剣から勢いよくバチバチと電撃が放たれる。俺は思わず剣を手放してしまった。
手放され、地面に落ちた後も、剣はバチバチと電気を放っている。これでは剣にロクに触ることもできない。
「……まさか」
俺はライカの事を見る。ライカの拳からは……バチバチと電気が放たれている。
今まで何度かライカの拳を剣で受け止めてしまった。もし、その時にライカが剣に対して電気を送り込んでいて……剣が帯電していたとしたら?
そして、その帯電状態が今、ライカによって解除された。気付くべきであった。金属である剣が帯電してしまう可能性を。
「武器、手放したな? 負けで良いのか?」
俺は思わずその言葉に怯む。剣は未だに帯電している。無理をすれば、剣を握ることはできるかもしれないが、握って闘うことなど到底できないだろう。
これは本当に負けて――。
「お主、まだ妾の話を最期まで聞いていないだろう?」
そんな折に耳元で聞こえてきたのは……レイリアの声なのであった。
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