第221話 強情
「……なんだ? 攻撃しないのか?」
興味なさそうな表情でそういうレイリア。しかし、リアの剣は、レイリアの目と鼻の先で止まったままで、まるで動かなかった。
「……まさかとは思うが、お主。あれだけの口を叩いておいて、妾に攻撃することができないのではないだろうな?」
リアは否定しなかったが、そうとしか言うことができない。
そもそも、今レイリアが使っている身体はミラのものなのだ。その身体を傷つけることなんて、リアにできるわけがない。
止まったままのリアを見て、完全に興味を失ったのか、レイリアは小さくため息を付いて肩を落とす。
「まったく……威勢がよかったのは最初だけか。もう良い。眠っていろ」
そう言うとレイリアはリアの腹部めがけて拳を繰り出す。その拳はミラの身体から繰り出されたとは思えないくらい勢いのあるもので、その一撃を受けたリアはそのまま後方に思いっきり吹き飛んだ。
「リア!」
俺は慌てて吹き飛ばされたリアの元へ駆け寄る。
リアは少なくとも10メートルは吹き飛ばされている。
「う、うぅ……」
「リア! 大丈夫ですか!?」
意外にもリアは意識を保っていた。あれほどの勢いで、あれほどの距離を吹き飛ばされたにも関わらず意識を保っているのは信じられなかった。
「気が済んだか? 妾はもう行くぞ。この身体は貰っていくからな」
レイリアは今一度俺たちの前に歩み寄ってきて、そう告げ、去っていこうとしたのだが……
「……ま、待て!」
と、既にフラフラではあったが、リアはなんとか剣を杖にして立ち上がった。その様子をレイリアはつまらなそうな顔で見ている。
「……まだ……終わっていない……!」
リアは剣を構える。見ているだけで辛い光景だった。できるなら俺がなんとかしたい……
だけど……
と、リアが剣を構えると同時に、レイリアはニンマリと微笑む。
「……そうか。そこまでお主……死にたいのだな」
瞬間、レイリアが明確に殺気を放つ。そして、その手が明らかにリアの命を刈り取る形になったのを俺は確認した。
「リア!」
もし、自分がリアを庇ったらどうなるのか……それを考えるよりも先に身体が動いてしまった。
そして、直後に俺は胸部を……レイリアの鋭い手刀によって貫かれてしまったのだった。
「なっ……アスト! な、なんで……!」
「……まったく。つまらんな」
不安そうなリアの声。至極不満そうなレイリアの声。
なんとなくだが……やはり血が繋がっているのか、二人の声は似ているような気がする……そんなことを俺はなぜかぼんやりと考えていた。
しかし、視界に映るのは大量の赤い血液で……程なくして俺はそのまま意識を失ったのだった。
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