追放された俺が辿り着いたのは、追放者だらけのパーティでした。

第97話 威圧

　そこに立っているだけで威圧感があるというのは中々感じることができない。しかし、身体を取り戻したレイリアはまさにそれだった。存在するだけで強大なプレッシャーがかかってくるのを感じる。

　俺はチラリと背後を見る。すでにメル、ミラ、リアの姿はなかった。どうやら、ミラが「ステルス」の魔法で隠れたらしい。

「……久しいな。ラティア」

　と、レイリアが先に話しかけたのは……ラティアの方だった。

「相変わらず妾の娘にふさわしい美しさだな」

「……娘？　自身の身体のスペアのことをまだ白々しく娘と呼ぶか」

　ラティアはさも馬鹿にした調子でレイリアにそう言った。レイリアは変わらず不敵な笑みでラティアを見つめている。

「またそれか……お主はまだ、あの愚かな妹の言っていたことを信じているのか？　妾にもしものことがあったときに、スペアとしての身体を用意するためにお主を作った、と？」

「我を育ててくれたのはお前ではない。叔母上だ。叔母上の言うことは信じても、お前の言うことを信じることはないな」

　ラティアがそう言うと、レイリアはなぜか笑っていた。その狂気を含んだ笑いを見ていると思わず身構えてしまう。

「……まぁ、否定はしない。その通りだからな」

　と、レイリアがそう言うと同時にラティアの姿が消えた。

「ラティア！　駄目だ！」

　しかし……俺の静止はおそすぎた。すでにラティアはレイリアのすぐ前まで迫っており、そのままいつの間にか手にしていた氷の剣で、その身体を貫こうとしていた。

　が……

「遅い……遅すぎる」

　レイリアの方がいくらか動きが早かった。一瞬にしてレイリアは吸魂の剣をラティアの身体に突き刺す。

「がはっ……！」

「ラティア！」

　そして、今一度吸魂の剣の刀身が鈍く光る。

　しかし、それをラティアも察知したのか、剣が突き刺さった身体を思いっきり後ろに後退させ、レイリアから距離をとった。

　人間ならば刺された痛みでできない芸当だが、吸血鬼のラティアだからできる回避方法だった。

「ふむ……魂まではとれなかったか。残念だな」

　しかし……剣で貫けれたラティアの腹部には大きな血溜まりができている。

　今の速さを、レイリアは完全に見切っていた。俺が早いと感じたラティアの速さをいとも簡単に……

「まぁ、いい。お主の力は大分吸い取った。立っているのもやっとだろう？　ラティア？」

　そういうレイリアの言葉通り、ラティアは立っているのがやっとという感じだった。しかし、鋭い目つきでラティアは俺の方を見る。

　その意味はわかる……ラティアは俺に見せてくれたのだ。レイリアの強さの片鱗を。

　俺は腕輪に祈りを込める。いつもよりも強く……それこそ、転生前の強さにかなり近い強さを得られるように。

「さて……次が本命だな」

　俺の腕輪が光りだした頃、レイリアが俺の方に視線を向けて、そのまま剣を構える。

「アスト……前回は、よくも妾をコケにしてくれたな？　たっぷり可愛がってやるぞ？」

　邪悪な笑みを浮かべながらレイリアは俺に向かってそう宣戦布告してきたのだった。