第91話 当然のこと
それから俺達はラティアに言われたままに客室で休むことにした。
といっても、これからレイリア討伐に臨むとなると、あまりリラックスできるような状況ではなかったが、かといって休む以外のこともないので、言う通りにすることにした。
「……それにしても大丈夫なの?」
メルが不安そうな顔で俺に訊ねてきた。
「え……大丈夫、とは?」
「いや、だって……あのラティアって人がレイリアの娘なんでしょう? アンタ、結構おされてたじゃない。そのラティアが強いって言っているくらいなんだから……本当のレイリアはかなり強いんじゃないの?」
俺はそう言われても苦笑いすることしかできなかった。確かに俺が全力を出していないとはいえ、ラティアはかなり強かった。
そうなると、確かにレイリアの実力は未知数ということになるが……
「まぁ、なんとかなるんじゃないかな~」
相変わらずのマイペースなのは、ミラである。
「アンタねぇ……っていうか、アンタ、さっきから何してるの?」
と、メルの言う通り、ミラは先程から器具を取り出し、薬草? のようなものを調合しているようだった。
しかし、見た限り薬草の割には……どこか、色合いが不気味な感じであったが……
「ん? あぁ、まぁ、これから始まる戦いの準備……かな?」
「準備って……薬草なんて作ったって意味ないんじゃない。レイリアの攻撃を受けたら一撃で……」
と、そこまで言ってからなぜかメルは少し自信ありげに俺の方を見る。
「……まぁ、この私がいる限り、誰も死なないわけだけど」
「あはは……頼りになりますね、メルは」
俺がそう言うとメルはさらに得意げな表情をする。実際、メルがいるから、俺も心配せずに、敵に突っ込んでいくことができるのだが。
「……皆、その……ちょっと聞いていいか?」
と、それまで部屋の隅でずっと黙ったままだったリアが口を開いた。俺達は一斉にリアの方を見る。
「……本当に、協力してくれるのか? 皆には……迷惑でしかないと思うのだが……」
リアは本当に心配しているようで、かなり不安そうな表情で俺達に聞いてきた。俺、メル、ミラは顔を見合わせた後、思わず笑ってしまう。
「え……な、なぜ笑うんだ?」
「あぁ、いえ……あまりにもリアが的はずれなことを言うものですから」
「的外れ?」
リアが困惑していると、メルがリアの近くに言って軽く額を小突く。
「痛っ……メル?」
「アンタ、私達がアンタのこと、迷惑だと感じているって思っているわけ? それこそ、私達に失礼じゃない?」
「あ……す、すまない……」
「……アンタは私達のパーティの勇者なんだから。アンタが困っていたら皆が協力するのは当たり前でしょ?」
メルがそう言うとリアは目を丸くしてしばらくメルのことを見ていた。
おそらく、メルにそんなことを言われると思わなかったのだろう。実際、俺もメルがあんなお姉さんらしいことを言うとは思わなかった。
「ちょっと。わかったの?」
「え……あ、あぁ……その……本当に……ありがとう」
リアは深々と頭を下げた。その姿を見ていると、俺達も覚悟を決めなければいけないと感じる……と、同時に、俺は心のどこかでリアのことを、羨ましいと感じてしまうのであった。
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