第7話 狩場へ

 この世界には魔物と言われるモンスターが多数いる。


 先代の魔王は在る一人の勇者がたった一人で倒した。しかし、それから数年して新しい魔王が誕生した。「私が死んでも次の魔王が……」といった死に際の魔王のセリフは間違っていなかったらしい。


 で、多くの冒険者がその魔王狩りに躍起になっているわけなんだが……未だにそれは成し遂げられていない。魔物は増える一方であるが、冒険者も増える一方である。


 そして、俺達がいる町の近くには魔物の狩場がある。といっても、かなり弱い魔物の狩場だから、既に魔王が誕生してから数年経っている今となってはほとんどそこに近寄る冒険者はいない。


 俺達みたいな余り物がたまーに、魔物狩りにやってくるくらいなのである。


「あー……アスト。一つ聞いてもいいか?」


 狩場に向かっている途中、リアが遠慮がちに俺に聞いてきた。


「え……なんでしょう?」


「その……アストのレベルは……いくつなんだ?」


 リアはかなり不安そうだった。確かに……言われてみれば先程の魔法使いといい、ヒーラーといい……かなりのレベルだった。


 となれば、当然、そのメンバーである俺も相当レベルが高い……そう思うのが当たり前だろう。


 しかし……


「あ~……これですね」


 俺は苦笑いしながら冒険者証を差し出す。それを見ると、リアは目を丸くして俺のことを見る。


「れ、レベル……9?」


 リアはかなり驚いているようだった。そりゃあ、レベル9って……駆け出し冒険者もいいところである。というか、あの魔法使いとヒーラーに、レベルのこと聞かれなくて良かったな……


 しばらくリアは呆然としていたが、程なくしてなぜかニッコリと微笑んだ。


「ふっ……ふふふっ……はっはっは! そうか! レベル9か! なら、お前の前では遠慮する必要はないな!」


 そう言うとリアは先程の態度とは打って変わって、意気揚々と冒険者証を俺に差し出す。


「レベルは……10」


「そうだ! 私の方がレベルが上だな!」


 嬉しそうにそう言うリア。なるほど……これであのメンバーの中で最下位のレベルは俺だということが確定したようだった。


「……あはは。ですね。俺が一番最下位みたいで」


「大丈夫だ! 私がいるのだから大船に乗った気持ちでいてくれ!」


 そう言って、リアは俺の前を歩いていく。大船って……そもそも、これから行く狩場はそれこそ、レベル1~5くらいの最弱のモンスターしか出ないから安全安心なのだが……


「……まぁ、元気になってくれてよかったか」


 そう思うことにして俺はリアの後を追ったのであった。

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